2022國學院大学A日程『源氏物語』浮舟「かの人の御気色〜」本文・現代語訳と解説
2022年 國學院大学A日程
2022年國學院大学A日程『源氏物語』「浮舟」|本文全文・現代語訳・語注・品詞分解
2022年國學院大学A日程の国語で出題された『源氏物語』浮舟巻について、出題本文、全文に対応する現代語訳、語注、品詞分解、敬語、心情の読み取り方を整理します。
宮は匂宮、かの人は薫大将、女君は浮舟です。匂宮が、浮舟の心が薫大将に定まったのではないかと疑い、山里へ向かう場面から始まります。
『源氏物語』「浮舟」古文本文
2022年國學院大学A日程で出題された部分です。前半では匂宮の推測と心情、後半では浮舟方の侍女たちが来訪を拒もうとする様子が描かれています。
前半:匂宮が山里へ向かうまで
宮、「かくのみ、なほうけひくけしきもなくて、返り事さへ絶え絶えになるは、
かの人の、あるべきさまに言ひしたためて、すこし心やすかるべき方に思ひ定まりぬるなめり、
ことわりと思すものから、いと口惜しくねたく、「さりとも、我をばあはれと思ひたりしものを、
あひ見ぬとだえに、人びとの言ひ知らする方に寄るならむかしなど眺めたまふに、
行く方しらず、むなしき空に満ちぬる心地したまへば、例の、いみじく思し立ちておはしましぬ。
後半:侍女たちが来訪を拒もうとする場面
葦垣の方を見るに、例ならず、「あれは、誰そ」と言ふ声々、いざとげなり。立ち退きて、
心知りの男を入れたれば、それをさへ問ふ。さきざきのけはひにも似ず。わづらはしくて、
「京よりとみの御文あるなり」と言ふ。右近は徒者の名を呼びて会ひたり。いとわづらはしく、
いとどおぼゆ。「さらに、今宵は不用なり。いみじくかたじけなきこと」と言はせたり。
宮、などかくもて離るらむと思すに、わりなくて、「まづ、時方入りて、侍従に会ひて、
さるべきさまにたばかれ」とて遣はす。かどかどしき人にて、とかく言ひ構へて、訪ねて会ひたり。
「いかなるにかあらむ。かの殿ののたまはすることありとて、宿直にある者どもの、
さかしがりだちたるころにて、いとわりなきなり。御前にも、ものをのみいみじく思しためるは、
かかる御ことのかたじけなきを、思し乱るるにこそ、と心苦しくなむ見たてまつる。
さらに、今宵は。人けしき見はべりなば、なかなかにいと悪しかりなむ。やがて、
さも御心づかひせさせたまひつべからむ夜、ここにも人知れず思ひ構へてなむ、
聞こえさすべかめる」。乳母のいざときことなども語る。大夫、「おはします道のおぼろけならず、
あながちなる御けしきに、あへなく聞こえさせむなむ、たいだいしき。さらば、いざ、たまへ。
ともにくはしく聞こえさせたまへ」といざなふ。「いとわりなからむ」と言ひしろふほどに、
夜もいたく更けゆく。
『源氏物語』「浮舟」現代語訳
前半の現代語訳
匂宮は、「浮舟がこのような態度ばかりで、やはり私の思いを受け入れる様子もなく、返事まで途絶えがちになったのは、あの人、つまり薫大将が、そうするのがよいという形に言い聞かせ、浮舟も少しは安心できる方へと心を決めてしまったようだ。それももっともなことだ」とお思いになる一方で、ひどく残念で、しゃくにも感じていらっしゃる。
「そうはいっても、浮舟は私のことを愛しいと思ってくれていたのに、会わずにいる間に、女房たちが言い聞かせる方、つまり薫大将の方へ心を寄せたのであろう」などと物思いに沈んでいらっしゃると、恋心が行き場を失い、何もない空いっぱいに広がってしまうような気持ちになられたので、いつものように激しく決心し、浮舟のいる山里へお出かけになった。
後半の現代語訳
葦垣の方を見ると、いつもと違って、「あれは誰ですか」と尋ねる声々が聞こえ、皆がすぐに気づいて警戒している様子である。匂宮はいったんその場を離れ、事情を知っている従者を中へ入れたが、その者についてまで誰なのかと尋ねる。以前に訪れたときの様子とはまるで違っていた。
従者は対応に困り、「京から急ぎのお手紙が届いたのです」と言う。右近は、身分の低い従者の名を呼び、その者に会った。右近はひどく面倒なことだと感じ、ますます困惑する。「今夜はまったく都合が悪いのです。宮にお越しいただいたのに、たいへん恐れ多いことです」と伝えさせた。
匂宮は、なぜこのようによそよそしく拒むのだろうとお思いになり、たまらない気持ちになって、「まず時方が中へ入り、侍従に会って、うまく取り計らえ」と命じて送り込む。時方は機転の利く人物なので、あれこれと言葉を工夫し、侍従を捜して会った。
侍従は、「いったいどうしたことでしょう。薫大将から何かお言いつけがあったということで、宿直をしている者たちが気を利かせようとして警戒している時期ですので、どうにもならないのです。浮舟様も、ひどく物思いばかりなさっているようですが、このような宮のご訪問を恐れ多く思い、心を乱していらっしゃるのだろうと、おいたわしく拝見しています。
今夜はどうしても難しいのです。人に気づかれてしまいましたら、かえってたいへん具合の悪いことになるでしょう。浮舟様にも十分にお気遣いいただけるような夜を選び、こちらでも人に知られないように準備したうえで、宮に申し上げることになるでしょう」と言う。さらに、乳母が気づきやすく警戒心の強いことなども話す。
時方は、「宮がここまでお越しになった道のりも並一通りのものではなく、これほど強くお望みになっているのに、簡単にお断り申し上げるのは不都合です。それでは、さあ、あなたもいらっしゃい。一緒に詳しく宮へ申し上げてください」と侍従を誘う。侍従が「それはたいへん困ったことでしょう」と言って互いに言い争っているうちに、夜もすっかり更けていく。
人物関係と場面の読み取り
この場面の人物関係
- 宮:匂宮。浮舟に強く心を寄せ、山里まで訪ねてくる。
- かの人・かの殿:薫大将。浮舟を山里に住まわせている。
- 女君・御前:浮舟。薫大将と匂宮との間で心を乱している。
- 右近・侍従:浮舟に仕える侍女。
- 時方・大夫:匂宮に仕える人物。侍従との交渉を任される。
| 試験 | 2022年 國學院大学A日程 国語 |
|---|---|
| 出典 | 『源氏物語』浮舟巻 |
| 中心人物 | 匂宮 |
| 読解の軸 | 推測、嫉妬、敬語、人物関係 |

匂宮はなぜ山里へ向かったのか
匂宮は、浮舟からの返事が途絶えた理由を、薫大将の説得によって浮舟の心が薫の方へ定まったためだと推測しています。理屈では「ことわり」と理解しながらも、感情としては「口惜しくねたく」と感じています。
この理性と感情の食い違いによって恋心が抑えられなくなり、「例の、いみじく思し立ちて」と、いつものように強く決心して山里へ向かいます。
心情問題で根拠にする語句
| 本文の語句 | 読み取れる心情 | 答案にまとめるときの考え方 |
|---|---|---|
| 思ひ定まりぬるなめり | 浮舟の心が薫に定まったという推測 | 事実として断定せず、匂宮がそのように考えていると説明する。 |
| ことわりと思す | 浮舟の判断を理屈では理解している | 直後の感情表現と対比させる。 |
| 口惜しくねたく | 残念さ、悔しさ、嫉妬 | 薫大将に浮舟を奪われる不安と結びつける。 |
| 行く方知らず、むなしき空に満ちぬる心地 | 行き場を失った恋心 | 古今集を踏まえた表現であり、感情が空いっぱいに広がる感覚と説明する。 |
| 例の、いみじく思し立ちて | 感情を抑えられず行動する決意 | 推測から嫉妬、決意へ進む心情の流れの結末として使う。 |
後半で侍女たちが匂宮を拒む理由
薫大将側の者たちが警戒しており、匂宮の来訪が知られると、浮舟の立場がさらに悪くなるおそれがあるためです。侍女たちは匂宮を軽んじているのではなく、浮舟を守り、人目を避けるために今夜の面会を断ろうとしています。
重要語句・語注
| 語句 | 意味・読み方 |
|---|---|
| かくのみ | このような状態ばかりで。 |
| うけひくけしき | 承諾する様子、受け入れる気配。 |
| あるべきさまに | そうするのが適切な形に、しかるべき形に。 |
| 口惜し | 残念だ、期待どおりにならず悔しい。 |
| ねたし | しゃくにさわる、悔しい。 |
| いざとげなり | すぐに気づき、目を覚ます様子である。 |
| わづらはし | 面倒だ、厄介だ、対応に困る。 |
| さらに、今宵は不用なり | 今夜はまったく都合が悪い。「さらに」は打消表現を伴い「まったく」の意。 |
| おぼろけならず | 並一通りではない、格別である。 |
| たいだいし | 不都合だ、もってのほかだ。 |
助動詞・敬語・品詞分解
品詞分解で確認したい3箇所
| 語句 | 品詞分解 | 訳と読解上の注意 |
|---|---|---|
| 思ひ定まりぬるなめり | 思ひ定まり(動詞「思ひ定まる」連用形)+ぬる(完了の助動詞「ぬ」連体形)+な(断定の助動詞「なり」連体形「なる」の撥音便無表記)+めり(推定の助動詞) | 「心を決めてしまったようだ」。匂宮の推測であり、事実の断定ではない。 |
| 聞こえさすべかめる | 聞こえさす(謙譲語)+べか(助動詞「べし」連体形「べかる」の撥音便無表記)+める(推定の助動詞「めり」連体形) | 「申し上げることになるようだ」「申し上げるつもりであるようだ」。侍従側の今後の取り計らいを示す。 |
| いかなるにかあらむ | いかなる(形容動詞「いかなり」連体形)+に(格助詞)+か(係助詞)+あら(ラ変動詞「あり」未然形)+む(推量の助動詞) | 「いったいどういうことであろうか」。侍従の発言中の疑問表現。 |
敬語から主語を判断する
- 思す・思しためる・おはします・おはしましぬ:匂宮を高める尊敬語。地の文でこれらが使われる箇所は、匂宮を主語として考える手がかりになる。
- 見たてまつる・聞こえさす:浮舟側や侍女側から、高貴な人物に対して用いられる謙譲表現。
- せさせたまふ:使役・尊敬が重なった表現。誰の行為を誰が高めているかを文脈から確認する。
助動詞を別ページで復習する場合
「ぬ」「めり」の意味だけでなく、活用形や接続から判断できるようにしたい場合は、確認したい内容に合わせて選んでください。
- 古文助動詞活用表PDFで、活用形を一覧確認する
「ぬる」「める」が何形かを表で確認したい人向けです。 - 古文助動詞の接続と意味を学び直す
どの活用形に接続するか、意味をどう見分けるかを確認したい人向けです。
入試問題としての読解ポイント
主語を人物名に置き換える
「宮」「かの人」「女君」などの呼び方を、そのままにして読み進めると人物関係を見失いやすくなります。最初に、宮は匂宮、かの人は薫大将、女君は浮舟と置き換えてください。
推測と事実を分ける
「思ひ定まりぬるなめり」は、浮舟が実際に薫大将を選んだと確定する表現ではありません。浮舟の返事が途絶えたことから、匂宮がそのように推測している表現です。
理性と感情の対立を読む
匂宮は浮舟の判断を「ことわり」と理解しています。しかし同時に「口惜しくねたく」と感じています。この対立が、匂宮の人物像と、その後の行動を説明する中心になります。
記述答案の組み立て方
問いの例:匂宮が浮舟のもとへ出かけたのはなぜか。
まとめ方:浮舟からの返事が途絶えたため、薫大将の説得によって浮舟の心が薫の方へ定まったのだと推測し、理屈ではもっともだと思いながらも、残念さや嫉妬を抑えられず、浮舟への恋心が募ったから。
本文は読めても、設問の根拠を答案にできない場合
現代語訳を確認するだけでなく、主語、敬語、心情表現を根拠として使い、國學院大学などの私大過去問を答案作成まで見直したい場合は、大学受験向けの個別指導が対応します。
復習チェックリスト
内容理解
- □ 匂宮が、浮舟からの返事が途絶えた理由をどのように推測したか説明できる。
- □ 「ことわり」と「口惜しくねたく」の対比を説明できる。
- □ 侍女たちが今夜の面会を断ろうとした理由を説明できる。
- □ 匂宮、薫大将、浮舟、侍女、時方の関係を整理できる。
文法・敬語
- □ 「思ひ定まりぬるなめり」を品詞分解して訳せる。
- □ 「思す」「おはします」の主語を判断できる。
- □ 「さらに」が打消表現とともに使われていることを説明できる。
記述対策
- □ 匂宮が山里へ向かった理由を、本文の語句を根拠に説明できる。
- □ 「むなしき空」の比喩が表す心情を説明できる。
- □ 推測と事実を区別して答案を書ける。
『源氏物語』「浮舟」のよくある質問
「かの人」とは誰ですか。
薫大将です。浮舟を山里に住まわせており、匂宮は、浮舟が薫大将側の説得を受け入れたのではないかと疑っています。
「思ひ定まりぬるなめり」はどのように訳しますか。
「心を決めてしまったようだ」と訳します。完了の助動詞「ぬ」と推定の助動詞「めり」を含み、匂宮の推測を表します。
匂宮はなぜ浮舟のいる山里へ向かったのですか。
浮舟の心が薫大将に定まったのではないかと不安になり、残念さや嫉妬、浮舟への恋心を抑えられなくなったためです。
匂宮、薫大将、浮舟はどのような関係ですか。
薫大将と匂宮がともに浮舟に思いを寄せています。この場面では、匂宮が浮舟の心が薫大将へ傾いたのではないかと疑っています。
現代語訳は掲載本文のどこまで対応していますか。
匂宮が山里へ出発する前半だけでなく、侍女たちが来訪を拒み、時方と侍従が対応を相談する後半まで対応しています。
次に確認する内容を選ぶ
この本文で分かりにくかった内容に合わせて、次のページを選んでください。同じ学習内容を繰り返すのではなく、現在の課題に合うページへ進むことが大切です。
学校の試験範囲として復習する場合:
本文、現代語訳、古語、助動詞をどの順番で覚えるか確認したい人は、古典定期テスト対策の勉強法も参考にできます。


