増鏡・とはずがたり現代語訳全文|語句の意味と比較ポイント解説
2022年・第3問
増鏡・とはずがたり現代語訳|2022年共通テスト古文の語句・敬語・比較解説
2022年共通テスト国語第3問で出題された『増鏡』と『とはずがたり』について、出題箇所の原文と現代語訳、重要語句、品詞分解、敬語、和歌、設問ごとの本文根拠、二つの文章の比較をまとめています。
このページに掲載しているのは、作品全体ではなく、共通テストで出題された箇所です。品詞分解も出題本文の全語ではなく、「まどろまれ給はず」「知られじな」など、読解や設問判断で重要になる表現を対象としています。
原文と現代語訳には共通の場面番号を付けています。特定の一文を確認したい場合は、同じ場面内の原文と訳文を見比べてください。
このページで確認できること
このページでは、2022年共通テスト国語第3問で出題された『増鏡』と『とはずがたり』について、現代語訳だけでなく、語句・敬語・和歌・比較読解までまとめて確認できます。
本文・現代語訳を確認したい人
- 出題箇所の原文と現代語訳を場面ごとに確認できます。
- 『増鏡』と『とはずがたり』の対応する場面を比べられます。
- 作品全体ではなく、共通テストで扱われた箇所に絞っています。
設問復習をしたい人
- 問1で問われやすい重要語句の意味を確認できます。
- 敬語から主語を判断する考え方を確認できます。
- 問4の比較読解で必要な、語り手・描写・評価の違いを整理できます。
特に問4では、二つの文章が同じ出来事を扱いながら、語り手の立場や描写の詳しさが異なる点を見抜くことが重要です。
訳を確認した後に復習する内容を選ぶ
現代語訳を確認しただけで終わると、初見問題や選択肢判断では同じところで迷いやすくなります。この本文で分かりにくかった内容に合わせて、助動詞、敬語、比較読解、定期テスト対策のどこを復習するかを選んでください。
講座案内は、本文内容を確認したうえで、演習や個別の補強が必要な場合に進めるよう、各セクションの後にも配置しています。
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共通テスト2022国語 第3問の概要
| 試験 | 大学入学共通テスト 2022年(令和4年度)国語 |
|---|---|
| 大問 | 第3問 古文(古典①) |
| 出典 | 文章Ⅰ『増鏡』、文章Ⅱ『とはずがたり』 |
| 掲載範囲 | 二作品の全編ではなく、共通テストで出題された箇所 |
| 品詞分解 | 出題本文の全語ではなく、読解上重要な表現 |
| 場面 | 後深草院が前斎宮に心を引かれ、二条を介して近づこうとする場面 |
二つの文章は同じ出来事を扱っていますが、出来事を語る人物と院との距離が異なります。語句や敬語だけでなく、誰が出来事を語り、どの言葉に院や前斎宮への評価が表れているかを確認することが重要です。
先に押さえる比較読解の要点
2022年共通テスト古文の第3問では、『増鏡』と『とはずがたり』が同じ出来事を扱っています。ただし、二つの文章は同じ内容を同じ角度から説明しているわけではありません。比較読解では、誰が語っているか、どこまで詳しく描いているか、院の行動をどう評価しているかを分けて読むことが大切です。
『増鏡』の要点
出来事の外側にいる語り手が、院の心情や行動を整理して語ります。「けしからぬ御本性なりや」のように、院への評価が地の文に直接表れます。
『とはずがたり』の要点
二条が当事者として、院との会話、手紙の取り次ぎ、前斎宮の反応、自分の困惑まで具体的に語ります。
問4で見るところ
語り手の立場、院への評価、二条の関与、前斎宮の反応、描写の詳しさを比べます。片方の文章にしかない内容を、両方にある内容のように読まないことが重要です。
比較読解で最初に確認すること
『増鏡』は院の行動を外側からまとめる文章、『とはずがたり』は二条が体験した出来事を内側から語る文章です。この違いを押さえると、設問で「どちらの文章に根拠があるか」を判断しやすくなります。
登場人物と関係を確認
原文を読む前に、後深草院、前斎宮、二条の関係を確認します。二条は、『増鏡』では院と前斎宮をつなぐ人物として説明され、『とはずがたり』では出来事を語る本人として登場します。
| 人物 | 立場・関係 | 本文中の役割 |
|---|---|---|
| 後深草院 | 前斎宮の異母兄にあたる人物 | 前斎宮の姿を見て心を引かれ、二条に手紙の取り次ぎや部屋への案内を求めます。 |
| 前斎宮 | 院の異母妹にあたる人物 | 院から手紙を受け取りますが、明確な返事を示さず、そのまま休みます。 |
| 二条 | 院に仕え、前斎宮とも親しく出入りできる人物 | 院と前斎宮の間で、使者と案内役を務めます。『とはずがたり』では語り手本人です。 |
後深草院
前斎宮に心を引かれる
二条
手紙を届け、院を案内する
前斎宮
手紙を受け取るが明確に返答しない
二条が取り次ぎ役になる理由
『増鏡』では、二条にあたる人物が院の身近に仕える大納言の娘であり、前斎宮とも縁があって親しく出入りしていたと説明されています。そのため、院は二条を通じて前斎宮へ思いを伝えようとします。
出来事の流れ
先に出来事の順序を確認すると、原文中で主語が省略されても、院・前斎宮・二条の行動を追いやすくなります。
- 院が前斎宮の姿を見て心を引かれる。
- 院が自室へ戻っても眠れず、思い悩む。
- 院が二条に手紙の取り次ぎを頼む。
- 二条が院の手紙と和歌を前斎宮へ届ける。
- 前斎宮は顔を赤らめるが、明確な返事をしない。
- 院が二条に、前斎宮の部屋へ案内するよう求める。
- 院が前斎宮の部屋へ忍んで入る。
『増鏡』は院の心情と行動を比較的簡潔にまとめ、『とはずがたり』は二条の会話、使者としての行動、前斎宮の反応を詳しく記しています。
この問題でつまずきやすいところ
本文の内容を大まかに追えていても、語り手の違い、敬語の向き、和歌の詠み手を取り違えると、選択肢判断で迷いやすくなります。
| つまずきやすい点 | 誤りやすい読み | 本文に合う読み |
|---|---|---|
| 二つの文章の関係 | どちらも同じ立場から出来事を説明していると読む。 | 『増鏡』は外側の語り手、『とはずがたり』は二条本人の語りとして読む。 |
| 敬語による主語判断 | 「給ふ」があるので、すべて院の動作だと判断する。 | 尊敬語と謙譲語の向きを分け、誰が誰に対して動作しているかを確認する。 |
| 二条の立場 | 二条を出来事の傍観者として読む。 | 二条は使者として手紙を届け、院を前斎宮の部屋へ案内する当事者である。 |
| 和歌の内容 | 将来の恋の成就や前斎宮側の思いを詠んだ歌と読む。 | 後深草院が、今見た前斎宮の面影がそのまま心に残ることを詠んでいる。 |
| 古語の意味 | 「をかし」「すさまじ」「やがて」を現代語の感覚で読む。 | 文脈に合わせて、「興味深い」「物寂しい」「そのまま」などと読む。 |
重要語句の意味を先に確認

検索されることの多い三つの表現を先にまとめます。語ごとの分解は、次の「重要表現の品詞分解」で確認できます。
| 語句 | 本文中の意味 | 確認点 |
|---|---|---|
| ねびととのひたる御さま | すっかり大人びて端正なご容姿 | 前斎宮の様子。「ねび」は「眠る」という意味ではありません。 |
| おほかたなるやうに | 通りいっぺんに、当たり障りなく | 形式的な挨拶と、その中に忍ばせた手紙が対比されています。 |
| まどろまれ給はず | うとうとすることがおできにならない | 「れ」は、院が眠ることができない文脈から可能と判断します。 |
重要表現の品詞分解
ここでは出題本文の全語ではなく、意味や助動詞の識別が設問判断に関係しやすい七つの表現を分解します。スマートフォンでも確認しやすいように、表現ごとに語の区切りと識別理由をまとめています。
1. 「まどろまれ給はず」の品詞分解
- まどろま
-
元の語・品詞:まどろむ/マ行四段活用の動詞
活用形:未然形
意味:うとうとし
- れ
-
元の語・品詞:る/助動詞
活用形:連用形
意味:でき
- 給は
-
元の語・品詞:給ふ/ハ行四段活用の補助動詞
活用形:未然形
意味:お~になる
- ず
-
元の語・品詞:ず/打消の助動詞
活用形:終止形
意味:~ない
識別理由
院は前斎宮の面影を思い続け、休もうとしても眠ることができない状態です。そのため、「れ」は可能と判断します。「給ふ」は動作主である院への尊敬です。
2. 「やみなむ」の品詞分解
- やみ
-
元の語・品詞:止む/マ行四段活用の動詞
活用形:連用形
意味:終わり
- な
-
元の語・品詞:ぬ/完了・強意の助動詞
活用形:未然形
意味:~てしまう
- む
-
元の語・品詞:む/助動詞
活用形:連体形
意味:~ような
識別理由
後ろに係助詞「は」が続き、本文では「終わってしまうようなのは」というまとまりで捉えます。「なむ」を一語の係助詞とはしません。
3. 「いかがたばかりけむ」の品詞分解
- いかが
-
品詞:副詞
意味:どのように
- たばかり
-
元の語・品詞:たばかる/ラ行四段活用の動詞
活用形:連用形
意味:取り計らっ
- けむ
-
品詞:過去推量の助動詞
活用形:連体形
意味:~たのであろう
識別理由
語り手が過去の取り計らい方を直接確認できず、推測しています。疑問を表す「いかが」を受けるため、「けむ」は連体形です。
4. 「知られじな」の品詞分解
- 知ら
-
元の語・品詞:知る/ラ行四段活用の動詞
活用形:未然形
意味:知り
- れ
-
元の語・品詞:る/助動詞
活用形:未然形
意味:知られ
- じ
-
品詞:打消推量の助動詞
活用形:終止形
意味:~ないだろう
- な
-
品詞:終助詞
意味:詠嘆や念押しを添える
このページでの解釈
このページでは、「この思いがあなたには知られないだろうなあ」という関係で捉え、歌意では「あなたはご存じないでしょうね」と示します。
「れ」の意味区分は教材や注釈によって説明が異なる場合があります。授業や試験で指定された資料がある場合は、その説明を優先してください。
5. 「見つる」の品詞分解
- 見
-
元の語・品詞:見る/マ行上一段活用の動詞
活用形:連用形
意味:見
- つる
-
元の語・品詞:つ/完了の助動詞
活用形:連体形
意味:~た
「つる」は後ろの名詞「面影」を修飾しています。全体では「たった今見た面影」です。
6. 「ねびととのひたる」の品詞分解
- ねびととのひ
-
元の語・品詞:ねびととのふ/ハ行四段活用の複合動詞
活用形:連用形
意味:成長して美しく端正になり
- たる
-
元の語・品詞:たり/完了・存続の助動詞
活用形:連体形
意味:~ている
後ろの「御さま」を修飾し、前斎宮が十分に成長して端正になった状態を表します。「ねび」は眠ることを表す語ではありません。
7. 「おほかたなるやうに」の品詞分解
- おほかたなる
-
元の語・品詞:おほかたなり/ナリ活用の形容動詞
活用形:連体形
意味:通りいっぺんな、形式的な
- やう
-
品詞:名詞
意味:様子
- に
-
品詞:格助詞
意味:~という様子で
表向きには形式的な挨拶をしながら、その中に院の本心を記した手紙を忍ばせています。全体では「ただ通りいっぺんの挨拶をするように」と訳します。
助動詞で迷ったときの復習先
「まどろまれ給はず」「やみなむ」「知られじな」では、助動詞の接続、活用形、意味の識別が読解に直結します。このページで扱った表現をもう一度整理したい場合は、次の解説で接続と活用を確認してください。
本文中の助動詞だけでなく、初見問題で助動詞を見分ける練習にもつながります。
文章Ⅰ『増鏡』原文・現代語訳
原文と現代語訳を四つの場面に分けています。同じ番号の原文と訳文が対応しています。
場面1 院が自室へ戻っても眠れない
原文
院も我が御方にかへりて、うちやすませ給へれど、まどろまれ給はず。ありつる御面影、心にかかりて覚え給ふぞいとわりなき。「さしはへて聞こえむも、人聞きよろしかるまじ。いかがはせん」と思し乱る。
現代語訳
院もご自分の部屋へ戻り、少しお休みになるけれど、うとうとすることもおできにならない。先ほど見た前斎宮のお姿が心にかかって思い出されるのは、どうしようもないことである。「わざわざ思いを申し上げるのも、世間体がよくないだろう。どうしたものか」と思い悩みなさる。
場面2 院がためらいながらも接近を望む
原文
御はらからと言へど、年月よそにて生ひ立ち給へれば、うとうとしく習ひ給へるままに、慎ましき御思ひも薄くやありけん、なほひたぶるにいぶせくてやみなむは、あかず口惜しと思す。けしからぬ御本性なりや。
現代語訳
きょうだいとはいっても、長年別々の場所で成長なさったので、疎遠な関係に慣れていらっしゃったために、前斎宮へ近づくことを遠慮するお気持ちも薄かったのであろうか。やはり、このまま胸の内を晴らせずに終わるのは、満足できず残念だとお思いになる。なんともけしからぬご性質であることよ。
場面3 院が二条に取り次ぎを頼む
原文
なにがしの大納言の娘、御身近く召し使ふ人、かの斎宮にも、さるべきゆかりありて睦ましく参りなるるを召し寄せて、「なれなれしきまでは思ひ寄らず。ただ少しけ近き程にて、思ふ心の片端を聞こえむ。かく折よき事もいと難かるべし」とせちにまめだちてのたまへば、
現代語訳
ある大納言の娘で、院が身近に召し使っている人がおり、その人は前斎宮ともしかるべき縁があって親しく出入りしていた。院はその女性をお呼び寄せになり、「馴れ馴れしい間柄にまでなりたいとは思っていない。ただ、もう少し近いところで、私の思いの一端だけでも申し上げたい。このような都合のよい機会も、なかなかあるまい」と、しきりに誠実そうな態度でおっしゃるので、
場面4 院が前斎宮へ近づく
原文
いかがたばかりけむ、夢うつつともなく近付き聞こえ給へれば、いと心憂しと思せど、あえかに消え惑ひなどはし給はず。
現代語訳
その女性がどのように取り計らったのであろうか、院は夢とも現実ともつかないような状態で前斎宮へ近づき申し上げなさった。前斎宮は大変つらいとお思いになるけれど、弱々しく取り乱すようなことはなさらない。
『増鏡』の特徴:院の心情から接近までを簡潔にまとめながら、「けしからぬ御本性なりや」と語り手が院を直接評価します。
文章Ⅱ『とはずがたり』原文・現代語訳
『とはずがたり』では、語り手である二条が実際に使者や案内役を務めています。
場面1 前斎宮の美しさと院への懸念
原文
斎宮は二十に余り給ふ。ねびととのひたる御さま、神も名残を慕ひ給ひけるもことわりに、花といはば、桜にたとへても、よそ目はいかがとあやまたれ、霞の袖を重ぬるひまもいかにせましと思ひぬべき御有様なれば、ましてくまなき御心の内は、いつしかいかなる御物思ひの種にかと、よそも御心苦しくぞおぼえさせ給ひし。
現代語訳
前斎宮は二十歳を過ぎていらっしゃる。すっかり大人びて端正になったご容姿は、伊勢の神々も別れを惜しんでお慕いになったのももっともだと思われるほどである。花にたとえるなら桜といっても、遠くから見れば本物の桜と見間違うのではないかと思われる。桜に霞が重なるように、そのお顔を袖でお隠しになる一瞬の間さえ惜しまれるほどのご様子なので、まして好色な院のお心の内では、早くもどのような物思いの種になるのだろうかと、院の心の動きをそばから見ている私にも、前斎宮のことがお気の毒に思われた。
場面2 前斎宮との対面後、院が二条へ相談する
原文
御物語ありて、神路山の御物語などたえだえ聞え給ひて、「今宵はいたう更け侍りぬ。のどかに明日は、嵐の山のかぶろなる梢どもも御覧じて御帰りあれ」など申させ給ひて、わが御方へ入らせ給ひて、いつしか「いかがすべき、いかがすべき」と仰せあり。
現代語訳
お話があり、前斎宮が神路山のことなどを途切れ途切れにお話し申し上げなさる。院は、「今夜はずいぶん夜も更けました。明日はゆっくりと、嵐山の葉の落ちた梢などもご覧になってからお帰りください」などとおっしゃる。院はご自分のお部屋へお入りになると、早くも「どうしたらよいだろう、どうしたらよいだろう」とおっしゃる。
場面3 二条が使者を命じられる
原文
思ひつることよとをかしくてあれば、「幼くより参りししるしに、このこと申しかなへたらん、まめやかに志ありと思はむ」など仰せありて、やがて御使に参る。
現代語訳
私が、予想していたとおりのことだと興味深く思っていると、院は「幼いころからお前が仕えてきた証しとして、このことを申し伝えて私の願いをかなえてくれたなら、本当に私への志がある者だと思おう」などとおっしゃる。そこで、すぐに私が使者として参上する。
場面4 形式的な挨拶に手紙を忍ばせる
原文
ただおほかたなるやうに、「御対面うれしく、御旅寝すさまじくや」などにて、忍びつつ文あり。氷襲の薄様にや、
知られじな今しも見つる面影のやがて心にかかりけりとは
現代語訳
ただ通りいっぺんの挨拶をするように、「お目にかかれてうれしく存じます。慣れない旅先でのお休みは、物寂しくありませんでしたか」などと申し上げ、その中にひそかに手紙がある。氷襲の重ね色を思わせる薄様紙であったろうか。
ご存じないでしょうね。たった今お目にかかったあなたのお姿が、そのまま私の心に深くかかり続けているとは。
場面5 前斎宮が手紙に明確な返答をしない
原文
更けぬれば、御前なる人も皆寄り臥したる。御主も小几帳ひき寄せて、御とのごもりたるなりけり。近く参りて、事のやう奏すれば、御顔うちあかめて、いと物ものたまはず。文も、見るとしもなくて、うち置き給ひぬ。
「何とか申すべき」と申せば、「思ひ寄らぬ御言の葉は、何と申すべき方もなくて」とばかりにて、また寝給ひぬるも心やましければ、帰り参りてこのよしを申す。
現代語訳
夜が更けたので、前斎宮の御前に仕えている女房たちも皆、寄りかかって横になっている。前斎宮も小几帳を引き寄せて、お休みになっているのだった。私はそば近くに参って事情を申し上げると、前斎宮はお顔を赤らめて、ほとんど何もおっしゃらない。手紙も、十分に読むという様子ではなく、そのまま置きなさった。
私が「何とご返事申し上げましょうか」と申し上げると、「思いも寄らないお言葉には、何と申し上げればよいのか言いようもなくて」とだけおっしゃり、またお休みになった。返事が得られず、私も気持ちが落ち着かないので、院のもとへ帰ってこの様子を申し上げる。
場面6 院が二条に部屋への案内を求める
原文
「ただ寝給ふらむところへ、案内せよ、案内せよ」と責めさせ給ふもむつかしければ、御供に参らんことはやすくこそ、しるべして参る。甘の御衣などはことごとしければ、御大口ばかりにて、忍びつつ入らせ給ふ。
現代語訳
院が「かまわないから、お休みになっているところへ私を案内しろ、案内しろ」とせき立てなさるのも煩わしいので、お供すること自体は難しいことではないと思い、私が道案内をして参る。院は、上皇の平服である甘の御衣を着ることさえ大げさになるので、大口袴だけのお姿で、こっそりとお入りになる。
語句:「甘の御衣」は「かんのおんぞ」と読み、上皇が平服として着用する直衣を指します。
場面7 院が前斎宮の部屋へ入る
原文
まづ先に参りて、御障子をやをら開けたれば、ありつるままにて御とのごもりたる。御前なる人も寝入りぬるにや、音する人もなく、小さらかに這ひ入らせ給ひぬる後、いかなる御ことどもかありけむ。
現代語訳
まず私が先に参り、お襖をそっと開けると、前斎宮は先ほどのままのご様子でお休みになっている。御前の女房たちも寝入ってしまったのだろうか、物音を立てる人もいない。院は身を小さくして、静かに這うようにしてお入りになった。その後、どのようなことがあったのであろうか。
『とはずがたり』の特徴:当事者である二条が、院との会話、手紙の取り次ぎ、前斎宮の反応、自分の感情まで具体的に語ります。
『増鏡』だけ・『とはずがたり』だけ確認する場合の要点
作品名だけで検索している場合でも、共通テストの復習では二つの文章を並べて読むことが大切です。片方だけを先に確認する場合は、次の点を押さえてください。
『増鏡』だけ確認する場合
院が前斎宮に心を引かれ、二条に取り次ぎを頼み、前斎宮へ近づくまでが簡潔に語られます。特に、院のためらいと、それでも接近を望む心情を押さえることが重要です。
また、「けしからぬ御本性なりや」は、語り手が院の行動や性質を評価している表現です。
『とはずがたり』だけ確認する場合
二条が、院の相談を受け、前斎宮へ手紙を届け、さらに院を前斎宮の部屋へ案内する流れが詳しく語られます。
前斎宮は手紙に明確な返事をせず、二条は院に急かされながら行動しています。二条が単なる傍観者ではない点を押さえましょう。
比較問題ではなぜ二つを並べて読む必要があるか
同じ出来事でも、『増鏡』では語り手の評価が目立ち、『とはずがたり』では二条の体験や行動が詳しく示されます。問4のような比較問題では、片方の文章だけにある描写を、もう一方にもあるように読まないことが大切です。
和歌「知られじな今しも見つる面影の…」の文法と意味
知られじな今しも見つる面影のやがて心にかかりけりとは
| 詠み手 | 後深草院 |
|---|---|
| 受け手 | 前斎宮 |
| 歌意 | たった今見た前斎宮の姿が、そのまま院の心から離れないことを伝えています。 |
「知られじな」
「知ら」+助動詞「る」の未然形「れ」+打消推量の助動詞「じ」+終助詞「な」です。このページでは、「この思いがあなたには知られないだろうなあ」という関係で捉えます。
歌意では、「あなたはご存じないでしょうね」と示すと分かりやすくなります。
「今しも見つる面影」
「し」は強意で、「今しも」は「まさに今」「たった今」という意味です。「見つる」は「見」+完了の助動詞「つ」の連体形で、後ろの「面影」を修飾します。
院が対面した直後から、前斎宮の姿を忘れられなくなっていることが分かります。
「やがて心にかかりけり」
「やがて」は、ここでは「そのまま」という意味です。「けり」は、気付いたことを詠嘆を込めて述べる働きと捉えられます。
全体では、「見た姿がそのまま心に残ってしまったことだ」となります。
末尾の「とは」と歌全体のつながり
末尾の「とは」は、「たった今見た面影が、そのまま心にかかっているということは」という内容をまとめ、冒頭の「知られじな」へつながります。末尾まで読んでから冒頭へ戻ると、歌全体の関係をつかみやすくなります。
誤りやすい読みと本文に合う読み
| 誤りやすい読み | 本文に合う読み |
|---|---|
| 前斎宮が院を思って詠んだ歌と読む。 | 後深草院が前斎宮へ送った歌です。 |
| これから恋が成就することを願う歌と読む。 | たった今見た前斎宮の面影が、そのまま心に残っていることを詠んでいます。 |
| 「やがて」を「そのうち」と訳す。 | ここでは「そのまま」と読み、見た面影がすぐに心へ残ったことを表します。 |
設問で狙われやすい本文表現の意味と解釈
単語の辞書的な意味だけでなく、本文中で誰の心情や行動を表すのかを確認します。解釈を含む箇所は、語句そのものの意味と文脈上の読みを分けています。
『増鏡』で院の心情を示す表現
| 本文表現 | 基本的な意味 | 文脈上の読み |
|---|---|---|
| さしはへて聞こえむ | わざわざ申し上げよう | 院は、前斎宮へ積極的に思いを伝えることをためらっています。 |
| 人聞きよろしかるまじ | 世間体がよくないだろう | 前斎宮へ思いを伝えることが周囲に知られた場合を気にしています。 |
| うとうとしく習ひ給へる | 疎遠な状態に慣れていらっしゃる | きょうだいであっても、別々に育ったため親しい関係ではなかったことを示します。 |
| 慎ましき御思ひ | 気が引けるお気持ち | 前斎宮へ近づくことへの遠慮やためらいです。 |
| なほひたぶるにいぶせくてやみなむ | このまま胸の内を晴らせずに終わるだろう | 思いを伝えないまま終わることを、院が受け入れられずにいます。 |
| あかず口惜し | 満足できず、残念だ | 院が前斎宮へ近づけない状態に物足りなさを感じています。 |
語り手の評価と前斎宮の反応
| 本文表現 | 基本的な意味 | 読解上のポイント |
|---|---|---|
| けしからぬ御本性なりや | なんとも不都合なご性質であることよ | 『増鏡』の語り手が、院の行動を地の文で直接評価しています。 |
| せちにまめだちて | しきりに誠実そうな態度を取って | 院が真面目そうに頼む様子であり、本当に誠実だと断定する表現ではありません。 |
| 夢うつつともなく | 夢とも現実とも区別がつかないように | 前斎宮へ近づく院の高揚した状態を表します。 |
| あえかに消え惑ひ | 弱々しく、消え入りそうに取り乱す | 本文では打ち消されており、前斎宮は弱々しく取り乱さなかったと読みます。 |
『とはずがたり』の主要表現
| 本文表現 | 基本的な意味 | 文脈上の読み |
|---|---|---|
| 神も名残を慕ひ給ひける | 神々も別れを惜しみ慕った | 前斎宮の美しさや尊さを強調します。 |
| 霞の袖を重ぬるひま | 霞が桜に重なるように、袖で顔を隠す間 | 桜と霞の景色を、前斎宮の顔と袖の関係に重ねた比喩です。 |
| くまなき御心の内 | 隅々まで明らかな院のお心の内 | この場面では、前斎宮の美しさに心を動かされる院の好色な心中を指すと読めます。 |
| 思ひつることよとをかしくて | 思っていたとおりだと興味深く思って | 二条が院の行動を予想していたことを示します。 |
| 幼くより参りししるしに | 幼いころから仕えてきた証しとして | 院は二条の長年の奉仕を持ち出し、自分の願いをかなえるよう求めています。 |
| 御旅寝すさまじくや | 旅先での休息は物寂しくありませんでしたか | 「すさまじ」を現代語の「ものすごい」とは訳しません。 |
| 氷襲の薄様 | 氷襲の重ね色を思わせる薄様紙 | 末尾の「にや」により、紙の色や種類を回想しながら推測しています。 |
| 見るとしもなくて | 見るというほどでもなく | 前斎宮は手紙に十分に目を通さず、そのまま置いたと読めます。 |
| 心やましければ | 気が晴れず、心残りなので | 返事を得られなかった二条の落ち着かない気持ちを示します。 |
| 責めさせ給ふもむつかしければ | 院がせき立てなさるのも煩わしいので | 院に急かされる二条の負担感が表れています。 |
| 小さらかに這ひ入らせ給ひぬる | 身を小さくして、這うようにお入りになった | 人目を避けながら院が部屋へ入る様子です。 |
誤って読みやすい表現
| 表現 | 誤りやすい読み | 本文に合う読み |
|---|---|---|
| ねび | 眠ることに関係する語と考える | 年を重ねて成長し、大人びる。 |
| おほかたなるやうに | 「だいたい」「おおよそ」とだけ訳す | 形式的に、当たり障りのない様子で。 |
| まどろまれ | 「れ」を尊敬と決めつける | 眠ることができないという文脈から可能と判断する。 |
| をかしくて | 常に「美しくて」と訳す | 予想どおりだと興味深く思って。 |
| すさまじくや | 「ものすごい」と訳す | 物寂しい、興ざめである。 |
| むつかしければ | 内容が難しいと考える | 院に急かされることが煩わしいので。 |
| やがて | 「そのうち」「いずれ」と訳す | 見た面影が、そのまま心に残る。 |
敬語から主語を判断する具体例
「給ふ」があるから主語は院である、とは限りません。一つの表現に尊敬語と謙譲語が含まれる場合は、動作主と、言葉や動作が向かう相手を分けて確認します。
うちやすませ給へれど
動作主:院
敬語:「給ふ」は院への尊敬
判断理由:直前の「院も我が御方にかへりて」を受けています。
思し乱る
動作主:院
敬語:「思す」は「思ふ」の尊敬語
判断理由:前斎宮への思いをどうするか悩んでいる人物は院です。
聞え給ひて
動作主:前斎宮
敬語:「聞こゆ」は話す相手である院への謙譲、「給ふ」は動作主である前斎宮への尊敬
判断理由:神路山の思い出を院へ話しているのは前斎宮です。
申させ給ひて
動作主:院
敬語:「申す」は発言の受け手である前斎宮への謙譲、「させ給ふ」は動作主である院への尊敬
判断理由:「今宵はいたう更け侍りぬ」と述べ、その後に自室へ戻る人物は院です。
奏すれば
動作主:二条
敬語:「奏す」は二条の動作を低め、申し上げる相手を高める謙譲語
判断理由:二条が前斎宮のそばへ行き、院からの手紙について申し上げています。敬語の扱いは、使用している教材の注釈も確認してください。
入らせ給ふ
動作主:院
敬語:「させ給ふ」は院への尊敬
判断理由:二条の案内で前斎宮の部屋へ入る人物は院です。
主語を判断するときの確認の流れ
- 直前に示された人物を確認する。
- その発言や動作を実際に行える人物を考える。
- 謙譲語の場合は、動作や言葉が誰に向かうかを確認する。
- 尊敬語だけで決めず、会話文の前後と場面を照合する。
敬語と主語判断だけを補強したい場合
この問題では、「給ふ」があるから院の動作と決めるのではなく、尊敬語と謙譲語の向きを分けて読むことが大切です。敬語、主語判断、助動詞など、苦手な単元だけを個別に確認したい場合は、ワンポイント講座の案内も参考になります。
2022年共通テストの問番号別に本文根拠を確認
設問文や選択肢をそのまま掲載せず、各問で確認したい本文表現と、正答判断の軸をまとめています。問題冊子を手元に置き、対応する箇所へ戻りながら確認してください。
問1 傍線部ア・イ・ウの解釈
ア「まどろまれ給はず」
「まどろま/れ/給は/ず」と分けます。院が前斎宮の面影を思って眠ることができない場面なので、「れ」は可能です。
イ「ねびととのひたる」
「ねびととのひ/たる」と分けます。「ねびととのふ」は、成長して容姿が端正になることを表します。
ウ「おほかたなるやうに」
形式的な挨拶の中に、院の本心を記した手紙を忍ばせています。「だいたい」ではなく、「通りいっぺんの挨拶として」という意味です。
選択肢で見抜くべきずれ:語句の一部だけを現代語の感覚で訳した選択肢に注意します。特に「ねび」「おほかた」「まどろまれ」は、文脈に戻って判断しましょう。
問2 院のためらいと「やみなむ」の解釈
確認する箇所は、「慎ましき御思ひも薄くやありけん、なほひたぶるにいぶせくてやみなむは、あかず口惜しと思す」です。
- 「慎ましき御思ひ」は前斎宮の気持ちではなく、院が遠慮する気持ち。
- 「ありけん」は院自身の推測ではなく、出来事を語る語り手の推測。
- 「やみなむ」は「やみ/な/む」で、思いを晴らせず終わってしまうようなのは、という意味。
- 院が残念に思っているのは、自分の思いを遂げずに終わること。
選択肢で見抜くべきずれ:前斎宮が院に積極的な思いを抱いている、または院が世間体をまったく気にしていない、といった本文にない説明が加わっていないか確認します。
問3 「せちにまめだちて」に表れた院の言動
「せちに」は切実に、しきりにという意味です。「まめだつ」は、本当に誠実であることではなく、誠実そうな様子を示すことです。
院は「馴れ馴れしい関係までは望んでいない」と述べながら、この機会を逃さず前斎宮へ近づこうとしています。発言だけでなく、その後すぐに接近する行動まで合わせて判断します。
選択肢で見抜くべきずれ:「まめだちて」を、院が完全に誠実で控えめに振る舞った証拠のように読むと、後続の行動と合わなくなります。
問4(ⅰ) 『とはずがたり』の臨場感
「いかがすべき、いかがすべき」「案内せよ、案内せよ」という発言の繰り返しに注目します。院の落ち着かない様子が、会話を通して直接伝わります。
前斎宮から期待どおりの返事を得たわけではなく、返事がないために院がさらに行動を急いでいる点を確認します。
選択肢で見抜くべきずれ:前斎宮が積極的に返事をした、院の行動が前斎宮の同意を受けて進んだ、という説明は本文と合いません。
問4(ⅱ) 二条だから分かる院の性格
「いつしかいかなる御物思ひの種にか」「思ひつることよとをかしくて」「心やましければ」「むつかしければ」など、二条自身の推測や感情を確認します。
二条は院のそばに長く仕えており、前斎宮の美しさを見た院がどのように行動するかを予想しています。単なる傍観者ではなく、院の性格をよく知る人物の視点です。
選択肢で見抜くべきずれ:二条を出来事から離れた第三者のように説明している選択肢は、使者や案内役としての行動と合いません。
問4(ⅲ) 二つの文章の書き方の違い
『とはずがたり』では、院の発言、二条の感想、手紙、部屋へ入るまでの行動が具体的に記されています。
『増鏡』では、それらを簡潔にまとめ、二条の感情や和歌などを省く一方、「いと心憂しと思せど」と前斎宮の心情に触れています。
また、和歌は前斎宮が将来院になびくことを詠んだものではありません。対面した直後から、前斎宮の面影が院の心から離れないことを伝えています。
選択肢を照合するときの確認の流れ
- 選択肢が説明している人物を確認する。
- 対応する本文表現を探す。
- 本文の出来事と、語り手の評価を分ける。
- 本文にない心情や、強すぎる断定が加えられていないか確認する。
- 『増鏡』と『とはずがたり』の記述を取り違えていないか確認する。
問4の比較で確認する本文根拠
問4の比較問題では、同じ出来事が二つの文章でどのように描かれているかを確認します。選択肢を見る前に、次のように場面ごとの違いを整理しておくと判断しやすくなります。
| 出来事 | 『増鏡』の書き方 | 『とはずがたり』の書き方 | 読解上の違い |
|---|---|---|---|
| 院が前斎宮に心を引かれる | 院が自室に戻っても眠れず、前斎宮の面影が心にかかると語られます。 | 前斎宮の美しさを詳しく描き、二条が院の心の動きを心配する形で語られます。 | 『増鏡』は院の心情を簡潔に示し、『とはずがたり』は前斎宮の描写と二条の受け止めを詳しく示します。 |
| 院が二条に取り次ぎを頼む | 院が二条に、思いの一端だけでも伝えたいと頼みます。 | 院が「幼くより参りししるしに」と言い、二条に願いをかなえるよう求めます。 | 『とはずがたり』では、院が二条を動かそうとする会話がより具体的です。 |
| 前斎宮の反応 | 前斎宮が心憂く思いながらも、弱々しく取り乱さないと語られます。 | 顔を赤らめ、ほとんど何も言わず、手紙も十分に読まずに置きます。 | 『増鏡』は反応をまとめ、『とはずがたり』は手紙を受け取った場面を具体的に描きます。 |
| 院が前斎宮の部屋へ入る | 二条がどう取り計らったのかを推測しつつ、院が近づいたと語ります。 | 二条が先に障子を開け、院が身を小さくして這うように入る様子まで語ります。 | 『とはずがたり』では、二条が案内役として関与していることがはっきり分かります。 |
選択肢で見抜くべきずれ
- 『増鏡』にある語り手の評価を、『とはずがたり』の二条の発言のように扱っていないか。
- 『とはずがたり』にある二条の行動を、『増鏡』にも詳しく書かれているように扱っていないか。
- 前斎宮が明確に返事をした、または院を受け入れたといった、本文にない心情を加えていないか。
- 和歌の詠み手や内容を取り違えていないか。
共通テストの比較読解を続けて練習したい場合
問4のような比較問題では、本文根拠を探す力と、選択肢の言い換えを見抜く力が必要です。このページで根拠の見方を確認した後、共通テスト型の比較読解や選択肢判断を継続して練習したい場合は、大学受験向けの個別指導案内も確認できます。
『増鏡』と『とはずがたり』の比較ポイント
作品ジャンルの名称だけで判断せず、本文表現と語り手の立場を対応させます。
1. 語り手の位置
『増鏡』:出来事の外側から、院の心情や行動を整理して語ります。
『とはずがたり』:二条が当事者として、院とのやり取りや自分の感情を語ります。
2. 院への評価
『増鏡』:「けしからぬ御本性なりや」と、語り手が院を直接評価します。
『とはずがたり』:二条の「思ひつることよとをかしくて」などから、院の性格を知る二条の受け止めが分かります。
3. 二条の関与
『増鏡』:二条にあたる人物が取り次ぎ役として示されますが、行動の細部は簡潔です。
『とはずがたり』:二条が使者として前斎宮のもとへ行き、さらに院を部屋へ案内する様子まで詳しく語ります。
4. 前斎宮の反応
『増鏡』:前斎宮は心憂く思いながらも、弱々しく取り乱さないとまとめられます。
『とはずがたり』:顔を赤らめ、返事に困り、手紙も十分には読まない様子が具体的に描かれます。
5. 描写の詳しさ
『増鏡』:院の心情、取り次ぎの依頼、接近、前斎宮の反応を簡潔にまとめます。
『とはずがたり』:対面後の会話、手紙、前斎宮の表情、二条の往復、院が部屋へ入る様子まで具体的に描きます。
選択肢での注意:描写が詳しいことと、すべての人物の内心が明示されていることは同じではありません。
復習チェックリスト
人物と出来事
- □ 後深草院、前斎宮、二条の関係を説明できる。
- □ 二条が取り次ぎ役に選ばれた理由を説明できる。
- □ 院が前斎宮を見てから部屋へ入るまでの流れを説明できる。
- □ 『とはずがたり』の語り手が二条であることを説明できる。
語句・品詞分解・敬語
- □ 「まどろまれ給はず」を四つの語に分けられる。
- □ 「やみなむ」の「な」と「む」を説明できる。
- □ 「知られじな」の「れ」「じ」「な」を確認した。
- □ 「給ふ」だけで主語を決めず、前後から判断できる。
- □ 一つの文に含まれる尊敬語と謙譲語を分けて考えられる。
和歌と比較読解
- □ 和歌の詠み手と受け手を説明できる。
- □ 「今しも」と「やがて」の意味を答えられる。
- □ 末尾の「とは」と冒頭の「知られじな」のつながりを説明できる。
- □ 二作品の語り手の違いを説明できる。
- □ 選択肢の説明に対応する本文表現を探せる。
学校の試験対策として復習する場合
本文と現代語訳を確認した後は、重要語句、品詞分解、敬語、和歌の説明を自分で言えるかを確かめると復習しやすくなります。定期テストに向けて古文本文をどう覚えるか確認したい場合は、勉強法の記事や定期テスト対策の案内も参考になります。
増鏡・とはずがたりのよくある質問
このページの「全文」は作品全体ですか、共通テストの出題箇所ですか。
作品全体ではありません。2022年共通テスト国語第3問で扱われた出題箇所の原文と現代語訳を掲載しています。
このページには出題箇所すべての品詞分解がありますか。
全語の品詞分解ではありません。「まどろまれ給はず」「やみなむ」「知られじな」など、意味や助動詞の識別が読解に関係する重要表現を分解しています。
『増鏡』と『とはずがたり』は同じ出来事を描いているのですか。
同じ出来事を扱っています。後深草院が前斎宮に心を引かれ、二条を通じて近づく場面を、異なる立場から描いています。
二つの文章では、誰が出来事を語っていますか。
『増鏡』では出来事の外側にいる歴史物語の語り手、『とはずがたり』では使者と案内役を務めた二条が語ります。
「まどろまれ給はず」の「れ」は、なぜ可能になるのですか。
前斎宮の面影が心にかかり、院が眠ろうとしても眠ることができない文脈だからです。「給ふ」が院への尊敬を表すことも合わせて確認します。
「おほかた」は、なぜ「だいたい」と訳さないのですか。
この場面では、表向きには当たり障りのない挨拶をしながら、その中に院の手紙を忍ばせています。そのため、「通りいっぺんに」「形式的に」と訳します。
「けしからぬ御本性なりや」と「思ひつることよとをかしくて」は何が違いますか。
「けしからぬ御本性なりや」は『増鏡』の語り手による直接的な評価です。「思ひつることよとをかしくて」は、二条が院の行動を予想どおりだと感じた表現です。
和歌「知られじな今しも見つる面影の…」は誰から誰への歌ですか。
後深草院から前斎宮へ送られた歌です。たった今見た前斎宮の姿が、そのまま院の心から離れないことを伝えています。
「給ふ」が院と前斎宮のどちらを指すかは、どう判断しますか。
直前に示された人物、発言内容、動作を行える人物、謙譲語の向かう相手を確認します。「給ふ」があるという理由だけでは主語を決められません。
2022年共通テスト古文の第3問は、何を比較する問題ですか。
『増鏡』と『とはずがたり』が、同じ出来事を異なる立場から描いている点を比較する問題です。語り手、描写の詳しさ、院への評価、二条の関わり方を確認すると、本文根拠を見つけやすくなります。
『増鏡』の「けしからぬ御本性なりや」は誰の評価ですか。
出来事の外側にいる語り手が、後深草院の行動や性質を評価している表現です。院本人の発言ではなく、地の文に示された評価として読みます。
『とはずがたり』の二条は、どのような立場で語っていますか。
二条は院に仕える人物であり、前斎宮への使者や案内役を務めた当事者として語っています。単なる傍観者ではなく、院と前斎宮の間に立って行動している点が重要です。
問4の比較問題では、どこを見ればよいですか。
院の発言、二条の感想、前斎宮の反応、語り手の評価表現を見比べます。特に、『増鏡』にだけある評価と、『とはずがたり』に詳しく出る二条の行動を分けて確認すると、選択肢のずれを見抜きやすくなります。
「知られじな」の「れ」は受身ですか、自発ですか。
このページでは、「この思いがあなたには知られないだろうなあ」という関係で捉えています。ただし、「れ」の説明は教材や注釈によって異なる場合があります。学校や授業で指定された説明がある場合は、その解釈を優先してください。
『とはずがたり』の前斎宮は、院の手紙に返事をしたのですか。
明確な返事はしていません。本文では、顔を赤らめ、ほとんど何も言わず、手紙も十分に読む様子ではなく置いたと語られています。「思ひ寄らぬ御言の葉は、何と申すべき方もなくて」とだけ述べ、また休んでいます。
まとめ
『増鏡』と『とはずがたり』は、後深草院が前斎宮に心を引かれ、二条を通じて近づこうとする同じ出来事を扱っています。
『増鏡』では、出来事の外側にいる語り手が院の心情と行動を簡潔にまとめ、「けしからぬ御本性なりや」と直接評価します。『とはずがたり』では、当事者である二条が、前斎宮の美しさ、院との会話、手紙の取り次ぎ、自分の感情まで具体的に語ります。
比較問題では、作品ジャンルの名称だけで判断せず、「誰が語っているか」「どの言葉に評価が表れているか」「同じ出来事がどの程度詳しく描かれているか」を本文表現に戻って確認することが大切です。


