古典「助動詞の活用」をマスターしよう!
対象:高校生〜大学受験生
「助動詞の数が多すぎて覚えきれない」「接続・活用・意味がごちゃごちゃしてわからない」──古典文法の中でも
最大の難所が助動詞です。本ページでは、
「なぜ助動詞が難しいのか」→「どの順番で学ぶべきか」→「具体的なトレーニング方法」までを整理し、
PDF教材も使いながら、迷子にならずに助動詞を攻略する学習法を紹介します。
動画で学ぶ:助動詞はなぜ難しい?(かきつばた × 夏井算数塾 対談)
中学受験専門 夏井算数塾代表・夏井と、
古典専門塾かきつばた講師・岡部の対談形式で、助動詞学習のポイントを解説しています。
本文とあわせて視聴することで理解が一気に深まります。
1. 助動詞はなぜこんなに難しく感じるのか
岡部の言葉を借りるなら、助動詞が難しい最大の理由は
「一つひとつの助動詞にくっついている情報量が圧倒的に多い」ことにあります。
| 項目 | 内容 | 量のイメージ |
|---|---|---|
| 種類 | 大学入試レベルでよく扱う助動詞はおよそ27〜30種類 | 「ず」「べし」「き」「む」「まじ」など多数 |
| 接続 | 各助動詞ごとに必ず決まった活用形に接続する | 例:「ず」=未然形接続/「べし」=終止形接続 |
| 活用 | 助動詞自体が活用を持つ品詞(未然・連用・終止・連体・已然・命令) | 多くは用言と同じ活用型、例外は「特殊型」「無変化型」など |
| 意味 | 1つの助動詞に2〜6個ほどの意味がつく | 例:「べし」=推量・意志・当然・命令・適当・可能 |
つまり、「接続」+「活用」+「意味」+「訳し方」を助動詞1つごとに覚える必要があり、
ざっくり計算すると400〜500個の知識を扱うことになります。
「それを訳も分からず端から全部一気に覚えようとするから、パニックになるんです。」
助動詞攻略のカギは、いきなり細部に突っ込まないこと。
まずは全体像をマクロに捉え、整理しながらミクロに降りていく学習法に切り替えましょう。
2. 助動詞学習は「マクロ → ミクロ」の順番で
助動詞に取り組むときに意識したいのは、
「ディバイド&ルール(分割して支配する)」という考え方です。
悪い例:いきなりディテールから始める
- 「る・らる」の活用表を丸暗記しようとする
- 意味(受身・自発・可能・尊敬)を全部一気に覚えようとする
- 27種類すべてで同じことをしようとして挫折
良い例:大まかな地図から作る
- まずは「どんな助動詞があるか」をざっくり知る
- 接続 → 意味 → 活用の順に大枠を押さえる
- そのあとで「る・らる」など個別の助動詞を細かく確認
「全く地図もない状態で『る・らる』のディテールから入っていくと、今自分が何をやっているのか、
どこがゴールなのかが分からなくなって、まさに迷子になってしまうわけです。」
まずは助動詞全体の「地図」を頭の中に作る。その上で個々の助動詞に降りていく──これが遠回りに見えて、
実は最短ルートです。
3. 学習の基本ステップ:接続 → 意味 → 活用
岡部が提案する助動詞学習の順番は、次の3ステップです。
- 接続を押さえる(どの活用形にくっつくか)
- 意味をグルーピングする(役割ごとに分類)
- 活用を型でまとめる(活用の種類ごとに整理)
3-1. まずは「接続」を押さえる
接続とは、「助動詞の上にくる語がどの活用形か」というルールです。
例として、打消の助動詞「ず」は未然形接続なので、
「花咲かず」の「咲か」は未然形になります。
最初の段階では、
「この助動詞はどの活用形にしかつかないのか」だけをざっくり覚えるのがおすすめです。
多くの生徒は、歌やリズムを使って
「助動詞の種類と接続」を一気に覚えてしまう方法をとっています。
3-2. 次に「意味」をグループで押さえる
助動詞は、意味のまとまりごとにグループ化することで、一気に覚えやすくなります。
| グループ | 主な助動詞 | 役割のイメージ |
|---|---|---|
| 主語ブロック | る・らる/す・さす・しむ | 受身・自発・可能・尊敬・使役など 「主語と動作主の関係」を表す |
| 時制ブロック | き・けり・つ・ぬ・たり・り・けむ など | 過去・完了・存続・結果など 「時間の流れ」を表す |
| 推量ブロック | む・むず・らむ・べし・まじ など | 話し手の推量・意志・当然・可能など |
| その他 | なり・たり・ごとし など | 断定・存在・比況など |
まずはこのような大きな4グループを頭に入れてから、
その中で「る・らる」「べし」「まじ」などの個々の助動詞を細かく見ていくと、
情報が整理されて覚えやすくなります。
3-3. 最後に「活用」を型で押さえる
助動詞は多くが用言と同じ活用パターンをとります。
- 下二段型(下二段動詞と同じ活用)にまとまる助動詞グループ
- 上一段・下一段・四段など、用言と同じ型で考えられるもの
- 一方で、「き」「けり」「ず」「まし」などは特殊型・無変化型として暗唱が必要
たとえば、「る・らる」は下二段型なので、
「(られ)・られ・らる・らるる・らるれ・られよ」のように、
下二段動詞の活用から類推して組み立てることができます。
すべてを丸暗記するのではなく、
「どの活用型に属するか」を押さえるのがコツです。
「学校で『せ・〇・き・し・しか・〇』と暗唱させられるのは、
用言の活用からは類推がきかない特殊型だからです。」
4. 古典「助動詞」の基本をおさえる
4-1. 助動詞とは?
助動詞とは、動詞などの下につく語、すなわち付属語であり、
活用する品詞です。動詞に接続して、
状況・状態・話し手の気持ちなどを表します。
「古典を得意にする勉強法」でも触れているように、
古典の読解力をつけるうえで助動詞は最重要項目です。
長文読解も、結局は助動詞の意味・接続・活用が分かっているかどうかで理解度が大きく変わります。
4-2. 主要な助動詞28個
古典で頻出となる主要な助動詞は、次の28個です。
それぞれについて意味・活用・接続を整理して覚えていきましょう。
未然形接続
むず・む・ず・じ・しむ・まじ・まほし・る・らる・す・さす
連用形接続
つ・ぬ・たり・けり・たし・き・けむ
終止形接続
らむ・べし・まじ・らし・なり・めり
体言・連体形接続
なり・たり・ごとし
サ変未然形・四段已然形接続
り
いきなり一語ずつ丸暗記するのではなく、
「どの活用形に接続するグループか」を意識して眺めるだけでも、
助動詞の配置が見えてきます。
5. 助動詞の活用表&空欄プリントでトレーニング
5-1. 助動詞活用表を「見る→声に出す」で定着させる
助動詞は、視覚+聴覚を使って覚えるのが効率的です。
一覧表を眺めるだけでなく、声に出してリズムで覚えることで、
テスト本番でもスムーズに活用が出てくるようになります。

5-2. 空欄バージョンで「書いて確認」
ある程度活用が見えてきたら、次は
「空欄を自力で埋める」トレーニングに進みましょう。
自分の弱点がはっきりと浮かび上がります。
活用チェック用・空欄プリント
テスト前やスキマ時間に解いてみて、どこがあやふやなのかを確認します。
できなかった箇所は活用表に戻って復習しましょう。
ダウンロードはこちら
かきつばた助動詞活用表 空欄バージョン(PDF)
さらに、なかなか覚えられない場合は、
歌で覚える古典の助動詞
も活用してみてください。リズムと歌詞で覚えると、暗記の負担が一気に軽くなります。
6. 助動詞の「意味」をどう見分けるか
6-1. 条件で切り分けられる助動詞は「型」で解く
受身・自発・可能・尊敬の意味をもつ「る・らる」などは、
条件で意味を切り分けるタイプの助動詞です。
| 意味 | 代表的な条件・見分け方 |
|---|---|
| 受身 | 主語と動作主が異なるとき(例:AがBに殴られる) |
| 自発 | 知覚・心情動詞に付くとき(思はる・見ゆる など) |
| 可能 | 打消語を伴うとき(〜えず/〜られず など) |
| 尊敬 | 上の条件に当てはまらないときの消去法で判断 |
こうした助動詞は、
短文演習で条件を意識しながら繰り返し解くのが近道です。
フィーリングで訳すのではなく、「どの条件に当てはまるか」を毎回確認しながら問題に取り組みましょう。
6-2. 条件で割り切れない助動詞は「訳のストック」で対応
一方で、「べし」「まじ」のように意味が6つ前後あり、
条件だけではきれいに切り分けられない助動詞もあります。
「『べし』や『まじ』は、きれいに条件で切れるわけではありません。
こういうものは諦めて訳を覚えるしかないです。」
このタイプは、
- 代表的な訳をストックしておく
- 本文を読みながら「どの訳を当てはめると自然か」を一つずつ試す
- 頻出パターンをノートなどにメモしておく
すべての助動詞を条件で完璧に切り分けようとするのではなく、
「型で解くもの」と「訳のストックで攻めるもの」を分けることが、
無理のない学習戦略になります。
7. 迷子にならない助動詞の学習プラン
ここまでの内容を踏まえて、助動詞学習のステップを整理すると次のようになります。
| ステップ | やること | ポイント |
|---|---|---|
| STEP1 | 助動詞の種類と接続をざっくり把握 | 歌や一覧表で「どんな助動詞があるか」を知る |
| STEP2 | 意味をグルーピング | 主語ブロック/時制ブロック/推量ブロック/その他に分ける |
| STEP3 | 活用を型で整理 | 用言と同じ活用型・特殊型・無変化型をまとめて覚える |
| STEP4 | 条件で意味を切り分けるトレーニング | 「る・らる」「す・さす・しむ」などは条件を意識して短文演習 |
| STEP5 | 条件で割り切れない助動詞は訳のストック | 「べし」「まじ」などはよく出る訳をノートにまとめておく |
「迷子になる前に、頭の中に地図を作っておこう──それが助動詞の学習法だと考えてください。」
一度にすべてを完璧にしようとするのではなく、
「どのステップにいるのか」を意識しながら少しずつ積み上げていくことが大切です。
8. まとめ:助動詞は「情報の整理」で勝負が決まる
本ページのポイントを最後に整理しておきます。
- 助動詞が難しい最大の理由は、1語あたりの情報量の多さ(接続・活用・意味・訳)
- いきなり細部に行かず、「マクロ → ミクロ」の順で学ぶことが大切
- 学習の基本ステップは 接続 → 意味 → 活用 の3段階
- 意味は「主語ブロック」「時制ブロック」「推量ブロック」などにグループ化して覚える
- 活用は用言と同じパターンで整理し、特殊型・無変化型だけ暗唱する
- 条件で切り分けられる助動詞は型で解き、そうでない助動詞は訳のストックで対応
- PDFの活用表・空欄プリント・歌などを組み合わせて、視覚+聴覚+書くトレーニングで定着させる
正しい順番で学べば、古典長文の読みやすさが驚くほど変わってきます。
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