初見の文章を読めるようにするには?

初見の文章への注意点

――今回は主に古文だと思いますが、初見の文章を読めるようにするには、という所です。
例えば中学校高校の定期テストでは、もちろん範囲が決まっていて文章も決まっていて、
それについて出題され答えていくという事をやる事が多いです。
ですが、実際入試問題ではもちろん初見の文章、見た事がある時もあればほとんどがない文章をきちんと読んでいかなきゃいけないという事になります。
その際の注意点等がありましたら教えて欲しいと思います。

岡部:注意点というのは実は全くないです。
はっきり言って初見の文章が読めるようになるという事に必要なのは、
オールラウンドな力という事になるかと思います。
文法が一通り身に付いていて、きちんとどんな文章でも品詞分解が出来る事です。
且つ、物語というのは往々にしてストーリーの流れというのがあります。
大体こういうタイプの話はこっち方面に話が進んでいくというのがある種のモーメントが掛かると言ってもいいのかも知れないです。
こっちにいくんだ、こういう流れがあるんだ、というのに従っていく事は大事です。
多くの受験生がなんとなくフィーリングで読んでいくと
訳文と途中からだんだんだんだんズレていきます。自分がこう思って読んでいたのが、訳文とある一点から離れ始めて、どんどん違う話になっていくというのが経験としておありだと思います。
これはもちろん文法的にちゃんと品詞分解が出来てなかったから話の筋を間違えました、
あるいは主語と目的語を取り違えていました、あるいは敬語がよく分かっていませんでしたという事からも起こります。
ですが、話の流れ、ストーリーはこう進んでいくものだという型みたいなものを
そもそも身に付けていないというのが原因の一つになるかと思います。
ですので、これに対する処方箋は一つです。数を読む事、数を解く事です。
私の担当している生徒さんというのは恐らく年間100本以上の古文を読むという
勘定になるはずです。
正直100本120本ぐらいでは全然足りないという気もしますけれど、
最低限それぐらいは解く必要があるという事になります。
恐らく学校の演習の時間、それと自分で進めていく古文の問題集、大体一冊辺り20から25語ぐらいが一つの問題集には長文が載っているはずです。
ですので、それを2、3冊やって毎週のように学校の演習の授業が年間40回とか30回とかある訳でしょうから、トータルすると大体100回分ぐらいにはそれだけでなるはずです。
ですので、一つの目安として100本から150本ぐらいは問題を解いた事がある
長文を読んだ事があるという状況にしてもらいたいという事です。

古典常識を押さえる

――もう一個重要なポイントとして、出てくる世界観というか、
いわゆる常識的な事を押さえておく必要があるのではないかという気もするのですが、
そこら辺についてはいかがでしょうか?

岡部:正直そういった事を系統だって勉強するというのは高校生には難しい所があるかと思います。
学校の授業で先生がそうした古典常識についてお話をされている場面、
あるいは問題集の解説でそういったものが書かれている所についてはちょっと意識をして、なんとなく流すのではなく意識的にそこは古典常識について書いてある所だと思って注意して読んで頂きというのが一点です。
高校入学時に多分もらったきり多分机の端っこにすでに片付けてあるか、
あるいは学校のロッカーに入れっぱなしになっていると思われる国語便覧があるかと思います。
あの分厚いやつです。
あれを特に古文漢文のパートについて意識して読んでもらいたいです。
あれを見るだけで全然違うと思います。
とにかくあれの素晴らしい所は、非常にビジュアルに作ってあります。
建築であるとか調度品であるとか、そういったものです。
少なくとも名前は見た事がある状態にしてもらうだけでも全然違います。
きちょうと言われた時に、なんかこうベロンと布が下がっている移動式のカーテンねっていうのが
ふわっとでも分かる、そこまで分からないまでも、せめて障壁具というんでしょうか?
部屋の中に置かれる家具なんだな、ぐらいが分かっていて、間違っても衣類の事ではないという事がイメージ出来るだけでも違います。
狩衣は男性が着る衣装の事なんだな、TPOとしてどういう場面で使うかまで知らなくても
そのぐらいの事が分かっているだけで随分違ってくるはずです。
ですので、とにかく国語便覧をちゃんと眺めておく事というのは大事になります。
あと特殊なのは、枕草子源氏物語については大学入試ではあらすじを知っています、
登場人物、人物関係を知っていますというのを前提で出題します。
読んだ事があるみたいな事を要求している訳です。
ですので、受験生がそんな事ある訳ないじゃないですか?
受験生が枕草子通読していたり源氏物語通読しているはずはないのに、
それをあたかも当然の顔をして出題をしてくるというのが大学入試古文です。
ですので、枕草子に関しては一条朝に関わる人物、定子、彰子それぞれの後ろ盾の家です。
定子だったら中の関白家の人たち、それに仕える女房です。彰子の方もそうです。
道長側、彰子にお仕えする紫式部、和泉式部、赤染衛門といった
女房の名前辺りは知っておかなければならないでしょう。源氏物語は言わずもがなです。
ですので、これ自体がちょっと大変な作業なんですが、
出来ればあさきゆめみし単行本で13巻、今はデラックス版とか新装版とか数バージョン出ていますが、それで10巻です。文庫版で7巻です。
大体の場合、単行本Amazonの古本で三千円台で買えます。
これ必ず買って下さい。必ず読んで下さい。文系受験生のバイブルです。
理系の方はそこまで要求するのは酷かなと思いますが、
少なくとも僕の高校では学級文庫に置いてありました。
絶対受験生が読まない訳にはいかない作品です。
単にストーリーが追える、人物関係が分かるというのもそうでしょうが、
調度品であるとか衣類であるとか建築というのが
具体的に人物と同じ縮尺でどんなふうに使われているのかというのが
ビジュアルに分かるようになっています。
なので、是非あさきゆめみしについては通読をして頂きたいというのが
古文家としては望ましいと思う所です。
ちょっと読みづらい所はありますが頑張って読んで頂きたいという所です。

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