古典の方角と十二支の覚え方──古文に出る昔の方角の言い方を一気に整理【高校古文】
古典の文章には、現代の私たちから見ると一見不思議な「方角の言い方」や「鬼門」「艮(うしとら)」といった表現がたびたび登場します。これらはすべて、十二支と方角の結びつきを知っていることが前提になっています。
この記事では、動画の内容をもとに、十二支と方角の関係、鬼門・桃太郎との関連までを整理し、古文読解のための古典常識として分かりやすく解説します。
十二支と方角の基本
十二支は「年」だけでなく、多用途に使われる
皆さんご存知の「十二支」は、本来さまざまなものを表すための記号体系です。
- 年(干支)… 例:今年は戌年/卯年 など (現代で一番身近な使い方)
- 時刻
- 日付
- 方角
本記事で扱うのは、特に「十二支が方角を表す場合」です。古文・古典常識の世界では、方角を十二支で述べることがしばしばあります。
十二支が示す基本方角
子・午・卯・酉と方角の対応
十二支を方角として使うときは、北を起点に時計回りに配置していきます。
- 北 … 子(ね)の方角
- 東 … 卯(う)の方角
- 南 … 午(うま)の方角
- 西 … 酉(とり)の方角
このとき、北(子)から南(午)に向かって引いた線を子午線(しごせん)と呼びます。
地球儀に、北から南に向かって引く線を子午線と言いますが、子の方角から午の方角に線を引いたから子午線な訳です。
このように、十二支と方角の対応は、地理用語・地名・建築などさまざまな場面に顔を出しています。

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十二支と角度のイメージ
円を12等分すると、1つあたり30°になります。
- 子の方角 … 0°(北)
- 丑の方角 … 30°
- 寅の方角 … 60°
- 卯の方角 … 90°(東)
しかし、日常生活で「30°の方角へ」や「一時の方向へ」といった言い方を使うのは、古文の世界でも扱いづらかったため、中間の方角には別の名前が付けられました。
艮・巽・坤・乾:十二支から生まれた中間方角

艮(うしとら):北東の方角
子(北)と卯(東)のちょうど中間、45°の方角が北東です。ここを古典では
- 艮(うしとら)の方角
- 丑寅(うしとら)の方角
と呼びます。
こちらの字、良いという字の上の点が付かないもの、「こん」と読むんですが、これで「うしとら」と読みます。別に書ける必要は全くないですが、読めるぐらいにはして下さい。
漢字の細かい書き方まで覚える必要はありませんが、「艮=丑寅=北東」という対応は、古文での方角表現を読む上で知っておきたいポイントです。
巽(たつみ):南東の方角
卯(東)と午(南)の中間、南東の方角は
- 辰巳(たつみ)の方角
- 巽(そん/たつみ)という字で表される
古いお城の門や、地名にもこの呼び名が使われています。
東京の地名にもあります。新木場の手前に辰巳という駅があります。あれは江戸城から見て辰巳の方角にあるからという事になります。
坤(ひつじさる):南西の方角
午(南)と酉(西)の中間、南西の方角は
- 未申(ひつじさる)の方角
- 坤(こん)と書かれることもある
乾(いぬい):北西の方角
酉(西)と子(北)の中間、北西の方角は
- 戌亥(いぬい)の方角
- 乾(けん/いぬい)という字で表される
城郭建築では、乾門・巽門といった名称の門があり、これらはすべて十二支に基づいた方角名から来ています。
鬼門と十二支:丑寅と「鬼」のイメージ
丑寅の方角=鬼門
北東、つまり艮(うしとら)の方角は、古くから鬼門(きもん)と呼ばれてきました。
- 鬼が入ってくるとされた不吉な方向
- 家の間取りや寺社の配置などで、今も意識されることがある
現代科学的なイメージに置き換えるなら、
- 東北方面=日当たりが悪く湿りやすい
- バイ菌・雑菌が繁殖しやすい、暗くじめじめした場所
- 病原体がやってくる方向として忌み嫌われた
といった背景があったとも考えられます。
鬼のビジュアルと丑寅(うしとら)
私たちが思い浮かべる「鬼」の姿をイメージしてみてください。
- 牛のような角を生やし
- 虎柄のパンツを履いている
これはまさに「丑(牛)」と「寅(虎)」の組み合わせであり、丑寅の方角=鬼門という考え方と深く結びついています。
桃太郎と十二支の「裏設定」?
ここから先は、講師自身も「話半分で聞いてください」と断りを入れている部分ですが、民間伝承や解釈として非常に興味深い話です。
丑寅の方向からやってくる鬼を退治する為に桃太郎はどうしたか?というお話です。
丑寅(鬼門)の反対側の力として、未(ひつじ)と申(さる)のラインがあり、そこから発想を広げて、
- 猿(申)
- 雉(酉)
- 犬(戌)
というメンバーを連れて鬼退治に向かった――という見方があります。
もちろん、これは後世のこじつけ的な解釈とも言えますが、
- 十二支の方角観が、昔話・民間伝承のイメージ作りにも利用されている可能性
- 現代人の「鬼」や「鬼門」のイメージが、実は十二支と強く結びついていること
を実感できる面白い例です。
古典と十二支:現代にも続く影響
十二支の方角を知っていると古文が読みやすくなる
ここまで見てきたように、十二支による方角表現は、現代の地名・建築・民間信仰にまで影響を与えています。
- 辰巳・巽、乾・坤といった方角名が、城門や地名に残っている
- 鬼門(丑寅)や裏鬼門(未申)といった発想が、家相などの考え方につながる
古文の世界でも、
- 「丑寅の方角」「辰巳の方角」といった言い方
- 方角名を使った比喩・暗示
が登場するため、十二支と方角の対応を知っているかどうかで、理解のしやすさが大きく変わります。
こうやって十二支というのは現代とも深く結びついています。現代人のものの考え方にも強く影響を与えているという事を踏まえて古文を読んで頂ければと思います。
単なる「昔の占い用語」としてではなく、古典の世界観・空間感覚を支える重要な基礎知識として、十二支と方角の関係を押さえておきましょう。
まとめ:十二支と方角を古典常識として身につけよう
- 十二支は年・時刻・日付・方角など、さまざまな対象を表す記号体系である。
- 方角として使う場合、北から時計回りに子・丑・寅・卯…と並び、北=子/東=卯/南=午/西=酉となる。
- 中間方角には艮(うしとら/北東)・巽(たつみ/南東)・坤(ひつじさる/南西)・乾(いぬい/北西)といった名前が付いている。
- 丑寅(艮)の方角は鬼門とされ、牛の角・虎柄パンツという鬼のビジュアルとも結びついている。
- 桃太郎の仲間(猿・雉・犬)を十二支で読む解釈など、十二支は昔話や民間信仰にも深く影響している。
- 辰巳・乾・巽などの方角名は、城門の名前や地名にも残っており、現代の生活空間にも十二支の痕跡がある。
- 古文読解では、これらの方角表現を理解していることで、場面のイメージがしやすくなり、文章の理解もスムーズになる。
十二支と方角の関係は、一度体系的に押さえてしまえば、古文だけでなく日本文化全体の理解にもつながる「古典常識」です。
地図をイメージしながら、「子=北」「丑寅=鬼門」「辰巳=巽」といった対応を、ぜひ日頃から意識してみてください。

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