漢文は本当に簡単?|共通テスト・大学入試で満点を狙うための基礎勉強法
対象:高校生〜大学受験生
「漢文は簡単・満点が取りやすい」とよく言われる一方で、実際に何から手をつければいいのか分からない人も多いはずです。
本ページでは、大学入試漢文の要求レベルの現実から出発し、
返り点・句法・音読・単語・古文とのつながりまで、漢文学習の基本方針を体系的に整理します。
動画で学ぶ:漢文はどう勉強する?(かきつばた × 夏井算数塾 対談)
古典専門塾かきつばた講師・岡部と、
中学受験専門 夏井算数塾代表・夏井による対談形式で、
漢文学習でまず押さえるべきポイントを解説しています。本文とあわせて視聴することで、理解が一層深まります。
1. 何から始めたらいい?大学入試漢文のレベルと全体像
まず大前提として、大学入試で要求される漢文のレベルは決して高くありません。
「大学入試漢文が要求しているレベルというのは、全然お話にならないレベルだという事です。
はっきり言えば、英語で言えばアルファベットが書けます、というレベルしか要求していません。」
一方で、古文については高校〜大学入試レベルの文法や読解がきちんと身についていれば、
大学で新しく文法を学び直す必要がないほどの完成度が求められます。
それに比べると、漢文で「やらなければいけないこと」はかなり限られていると言えます。
| 項目 | 古文 | 漢文(大学入試) |
|---|---|---|
| 要求レベル | 文法・読解ともに高い完成度が必要 | 入門にすらならないレベル(範囲が限定的) |
| 学習内容 | 活用・助動詞・敬語・和歌など広範囲 | 返り点・句法・基本語・思想キーワードなどに絞られる |
| イメージ | 「古典読解の土台を作る本格学習」 | 「効率よく仕上げれば得点源にしやすい科目」 |
だからこそ、漢文では限られた範囲を整理して学ぶことが重要です。
やみくもに問題演習をするのではなく、次のような基本要素から優先順位をつけて取り組みましょう。
2. 最優先は「返り点」と「句法」を固めること
大学入試レベルの漢文で、まず最初にしっかり身につけたいのは次の二つです。
- 返り点を正しく打ち・読めること
- 基本的な句法(再読文字・否定・疑問/反語など)を押さえること
2-1. 返り点が読めるようにする
漢文を日本語として読み下す際の大前提が、返り点です。
特に、一二点+レ点/上下点+レ点といった少しひねったタイプの返り点は、意識的な練習が必要になります。
こうしたパターンは、早い段階で集中的に練習しておくことが大切です。
最初は時間がかかっても構いません。正しく読み下せるようになるまで繰り返しましょう。
2-2. 句法はグループごとにまとめて覚える
漢文の句法は、多くの問題集・参考書で次のようにあらかじめグルーピングされています。
| 句法グループ | 主な内容 | 覚える目安 |
|---|---|---|
| 再読文字 | 「未だ〜ず」「将に〜んとす」など | 代表的な形と訳を確実に |
| 否定 | 「不」「非」「無」「勿」などの否定表現 | 二重否定も含めてパターンで暗記 |
| 疑問・反語 | 「〜や」「〜か」「〜乎」など | 疑問か反語かの見分け方を確認 |
| 抑揚・比較ほか | 強調・比況・比較などの表現 | 頻出の決まり文句を押さえる |
多くの参考書は、まずこのような句法パートを学んだあとに、実際の長文(次第・共通テスト過去問など)でまとめて演習できる構成になっています。
大切なのは、本文中で句法が出てきたときに、
「これはさっきやった否定だ」「今のは二重否定のパターンだ」と意識して解けるか
という点です。
一気に覚えても忘れやすく、万人向けではありません。
早めに句法を始めて、短時間でも良いので継続的に復習していく方が、安定した実力につながります。
3. 漢文はなぜ「音読」が大事なのか
古文と漢文はセットで扱われることが多いですが、勉強法まで同じと考えるのは危険です。
特に漢文では、音読が想像以上に重要な役割を果たします。
3-1. 漢文はリズム良く読み下すように作られている
漢文は、書き下し・読み下しをするときに、リズミカルに読めるように作られていることが多い文章です。
「漢文というのは割合に書き下し読み下しをする際というのが、往々にしてリズミカルになっています。
読んでいて気持ちいいように読み下すように作ってあります。」
そのリズムを声に出して体得することで、句読点の位置や意味の切れ目が自然と分かるようになり、
読解の負担が減っていきます。
3-2. 二項対立を意識しながら読む
漢文では、二項対立(AとBを対比させながら話を進める構成)で文章が書かれていることが非常に多くなります。
たとえば「君子と小人」「仁と利」「道と術」など、対になる概念を対比しながら論を進めるスタイルです。
こうした構造を意識しながら音読することで、
話の流れや筆者の主張がつかみやすくなるというメリットがあります。
音読のポイント
- 返り点を意識しながら、書き下し文をゆっくり声に出して読む
- 対比表現(〜は…、〜は…)が出てきたら、声のトーンを変えて区別して読む
- 同じ文章を何度も音読し、リズムと語順の感覚を身につける
4. 漢文単語はどこまで覚える?重要語と思想キーワード
古文と同様に、漢文にも覚えておくべき単語・表現があります。
ただし、闇雲にすべてを暗記するのではなく、「漢文特有の語」と「思想キーワード」に絞るのがポイントです。
4-1. 漢文に特有の人称・表現を押さえる
代表的なものとして、次のような漢文特有の一人称があります。
| 漢字 | 読み | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 朕 | ちん | 皇帝の一人称 |
| 妾 | しょう | 女性の一人称 |
| 孤 | こ | 王様の一人称(「孤独の孤」) |
こうした漢文特有の語を知らないと、そもそも文章が読めない場面も多いため、最優先で暗記しておきましょう。
4-2. 思想キーワードと多義語を押さえる
漢文で扱われる文章は、儒学・法家などの思想史に関わる内容が多くなります。
そのため、思想に関するキーワードを知っているかどうかで、
本文の理解度が大きく変わることがあります。
さらに、漢文には多義語が多く、意外な意味を持つ語がしばしば出題されます。
ただし、出題されやすい多義語はある程度決まっており、
良質な参考書では巻末などに「漢文重要語」「多義語」リストとして整理されていることが多いです。
「一部いい参考書は後ろに出題されやすい多義語とか、あるいは漢文重要語みたいな形で
大体20語から100語ぐらい教材によって整理されていますので、それはきちんと見ておくという事が大事になるかと思います。」
まずは20〜100語程度の重要語をきちんと確認し、
単語帳やカードで繰り返しチェックするだけでも、読解の安定感が大きく変わります。
5. 古文の知識は漢文の「土台」になる
書き下し文・読み下し文とは、
「古代の中国語(原文)を古代日本語(古文)に翻訳したもの」
と言い換えることができます。
「漢文というのは古代の中国語を古代日本語で翻訳するというのが書き下し読み下しになります。
その書き下したもの読み下したものを現代語訳するものというのが現代語訳という事になる訳です。」
つまり、書き下した漢文を読むためには、
古文で学んだ助動詞・動詞の活用や接続の知識が欠かせません。
古文文法があやふやなままでは、漢文を訓読することは難しくなります。
漢文読解の大きな助けになります。
古文と漢文を「別物」としすぎない
漢文を読み下した結果、ほとんど古文そのものの形になることも珍しくありません。
古文と漢文をまったく別の科目として扱うのではなく、
「古文の文法力を土台にして、漢文を上に積み上げる」イメージで学習を進めると効率的です。
6. まとめ:漢文は「範囲が限られた得点源」になる
漢文は、大学入試で要求される範囲が比較的限られているため、
正しい順番で学べば大きな得点源になりやすい分野です。
- 大学入試漢文の要求レベルは高くなく、やるべきことが限定されている
- 最優先は、返り点を正しく読めることと、再読文字・否定などの基本句法を押さえること
- 句法はグループごとに整理されているので、パターンで覚えると効率的
- 音読を通して、リズムと二項対立の構造を体で覚える
- 漢文特有の一人称や思想キーワード、多義語など、重要語だけを重点的に暗記する
- 書き下し文を読むには、古文文法(特に助動詞)の知識が不可欠
一度にすべてを完璧にしようとするのではなく、
「返り点 → 句法 → 音読 → 単語 → 古文との連携」
の順番で少しずつ積み上げていけば、漢文は必ず「読める」科目になります。
自分のペースを大切にしながら、今日から一歩ずつ取り組んでいきましょう。
漢文・古文を「まとめて得点源」にしたい方へ
返り点・句法・音読・単語……やるべきことは分かっていても、
「どこから・どの順番で進めればいいか」となると一人では不安になりがちです。
古典専門塾かきつばたでは、
完全1対1の個別指導で、古文・漢文の基礎固めから入試レベルの仕上げまでをフルサポート。
返り点や句法の整理から、志望校の過去問演習まで、
一人ひとりの状況に合わせて学習プランを組み立てます。
オンライン授業にも対応しているので、通塾の負担なく、
自宅から古典の学習を進めることができます。


