漢文は何から勉強する?返り点・句法・音読・重要語

高校国語/漢文
対象:高校生〜大学受験生

漢文は何から勉強する?返り点・句法・音読・重要語

漢文がまったく読めない場合は、最初に返り点を使って読む順番を確認することから始めます。その後、書き下し文と現代語訳を対応させ、基本句法、音読、重要語の順に進めると、文章の読み方を段階的に身につけられます。

漢文は学習範囲を比較的整理しやすい一方、返り点や句法を覚えるだけでは十分ではありません。短い文章の中で知識を使い、発言者、人物関係、対比、文章の主張まで確認できる状態を目指しましょう。

最初に確認する漢文の学習順

高校漢文の基礎は、次の順番で進めると整理しやすくなります。いきなり長い入試問題へ進むのではなく、まずは一文を正しい順番で読み、意味を説明できる状態を作ることが大切です。

1返り点

レ点や一二点に従い、漢字を読む順番を示せるようにします。

主に役立つ設問:読み順、書き下し文

2書き下し文と現代語訳

読み下した文と、その内容を現代の日本語で表した文を区別します。

主に役立つ設問:書き下し文、現代語訳

3基本句法

再読文字、否定、疑問・反語などの目印に気づけるようにします。

主に役立つ設問:現代語訳、空欄補充、内容説明

4音読

意味の切れ目や対比を意識しながら、書き下し文を読みます。

主に役立つ設問:文章構成、主張、理由説明

5重要語と一人称

語の意味だけでなく、発言者の立場や人物関係を確認します。

主に役立つ設問:発言者、人物関係、内容把握

6古文文法との関係

書き下し文に含まれる助動詞や活用を確認します。

主に役立つ設問:訓読、現代語訳

1. 返り点を読めるようにする

漢文の学習で最初に確認したいのが、漢字をどの順番で読むかです。漢文と日本語では語順が異なるため、訓点の一つである返り点を使って、日本語として読む順番を示します。

基本は上から下へ進みながら、返り点が付いた字をいったん飛ばし、戻る合図が来たところで返って読むことです。

レ点だけを使う短い例

学習用例文

返り点付きの形

読む順番:書① → 読②

書き下し文:書を読む。

現代語訳:本を読む。

「読」にレ点が付いているため、すぐ下の「書」を先に読み、その後で「読」に戻ります。最初は、漢字の横に①②と番号を書き込み、読む順番を目で確認しても構いません。

レ点と一二点を組み合わせる例

学習用例文

返り点付きの形

其人

読む順番:其① → 人② → 見③ → 欲④

書き下し文:其の人を見んと欲す。

現代語訳:その人を見たいと思う。

一二点では、一点まで読んだ後に二点へ戻ります。この例では「其の人」を読み、「見」に戻った後、レ点の関係によって最後に「欲」を読みます。

慣れるまでは、原文の横に読む順番を書き込み、書き下し文と照らし合わせましょう。番号を付けなくても正しい順番を追えるようになったら、次の段階へ進みます。

2. 書き下し文と現代語訳を対応させる

書き下し文は、漢文を返り点や送り仮名に従い、日本語の語順と文法に合わせて読める形にしたものです。これに対して現代語訳は、書き下し文の内容を現在使われる日本語で分かるように表したものです。

返り点を読めても意味が分からない場合は、書き下し文を作った後に、古文の助詞・助動詞、句法、重要語を確認します。

原文・書き下し文・現代語訳の違い

原文 学而時習之、不亦説乎。
書き下し文の一例 学びて時に之を習ふ、亦た説ばしからずや。
現代語訳の一例 学んだことを適切な時に復習するのは、なんと喜ばしいことではないか。

出典:『論語』学而第一(本文の一部)

書き下し文では「習ふ」「説ばしからずや」のような古文の形が残ります。現代語訳では、その形を現在使われる日本語へ置き換え、文全体の意味が伝わるようにします。

次へ進んでよい目安

教科書や問題集の短文について、原文を正しい順番で読み、書き下し文と現代語訳の違いを説明できれば、基本句法の学習へ進みます。

3. 基本句法を短文の中で覚える

句法は、形と訳だけを別々に暗記するのではなく、原文中の目印を見つけ、読み、意味を判断するところまでを一組として覚えます。

まずは再読文字、否定、疑問・反語を優先し、その後で比較、限定、二重否定などへ広げると整理しやすくなります。

再読文字は同じ字を二度に分けて読む

再読文字は、返り点によって単に読む順番を入れ替える字とは異なります。一つの字を、最初と後の二度に分けて読む点が特徴です。

学習用例文

原文の形

読む流れ

  1. 「未」を「いまだ」と読む
  2. 「知」を「知ら」と読む
  3. 「未」の後半に当たる否定を「ず」と読む

書き下し文:未だ知らず。

現代語訳:まだ知らない。

学習用例文

原文の形

読む流れ

  1. 「将」を「まさに」と読む
  2. 「行」を「行か」と読む
  3. 「将」の後半を「んとす」と読む

書き下し文:将に行かんとす。

現代語訳:今にも行こうとする。

否定・疑問・反語を原文から見分ける

否定

学習用例文

原文:

目印:

書き下し文:知らず。

現代語訳:知らない。

疑問

学習用例文

原文:
誰為

目印:

書き下し文:誰か此れを為す。

現代語訳:誰がこれをするのか。

反語

学習用例文

原文:
豈不知哉

目印:豈・哉

書き下し文:豈に知らざらんや。

現代語訳:どうして知らないことがあろうか、いや知っている。

疑問と反語は、疑問を示す字だけで機械的に決められない場合があります。本当に答えを求めているのか、それとも強く否定・肯定するために問いかけているのかを、前後の文脈から確認します。

比較・限定・二重否定の例

種類 学習用の形 書き下し文 意味
比較 A不如B AはBに如かず AはBに及ばない
限定 唯学耳 唯だ学ぶのみ ただ学ぶだけである
二重否定 人無不学 人、学ばざる無し 学ばない人はいない

二重否定の読み方を確認する学習用例文

返り点付きの形:
人無

読む流れ:人 → 学① → 不② → 無③

書き下し文:人、学ばざる無し。

現代語訳:学ばない人はいない。

「不」と「無」のような否定表現が重なると、文全体では強い肯定になる場合があります。一つずつの否定だけを見るのではなく、文全体の意味を確認しましょう。

句法の知識は、現代語訳、空欄補充、傍線部解釈などに直結します。覚えた翌日や数日後にも同じ例を見直し、原文を見たときに読みと意味が出てくるか確認してください。

4. 音読で語順と意味の区切りを確認する

返り点と句法を確認した後は、書き下し文を声に出して読みます。音読の目的は、速く読むことだけではありません。日本語の語順、意味のまとまり、対比、繰り返しを確認することが大切です。

対比を意識する音読例

原文 君子喩於義、小人喩於利。
書き下し文の一例 君子は義に喩り、小人は利に喩る。
区切りの例 君子は/義に喩り、/小人は/利に喩る。
対比 「君子」と「小人」、「義」と「利」
現代語訳の一例 君子は道義に明るく、小人は利益に明るい。

出典:『論語』里仁第四

すべての漢文が同じ構造を持つわけではありませんが、対句や反復が使われている文章では、対応する語を意識すると筆者の主張を整理しやすくなります。

同じ短文を数回読み、最後に本文を見ずに意味を説明してみると、音だけを追う練習になるのを防げます。

5. 漢文の重要語と一人称を覚える

漢文の重要語は、最初から大量に暗記するのではなく、読解に直接関わる語から確認します。優先したいのは、一人称などの人物関係を示す語、思想に関わる語、複数の意味を持つ語、頻出の動詞や副詞です。

漢文の重要語と一人称を学ぶイメージ

漢文の一人称は話者の立場まで確認する

漢文の一人称は、現代語訳では多くが「私」と訳されます。しかし、原文で使われている語を見ると、話者が君主なのか、臣下なのか、女性なのかといった人物関係を判断できる場合があります。

漢文の一人称と話者の立場を確認するイメージ

最初に覚えたい一人称

読み:われ

広く自分を表します。単数か複数かを含め、前後の文脈で判断します。

読み:しん

臣下が君主に対して自分を示す場合があります。「臣下」という名詞で使われる場合もあります。

読み:ちん

帝王の一人称として現れます。時代による用法の違いにも注意します。

読み:

君主や諸侯が自分を示す場合があります。単に「王様」と固定せず、時代と人物の立場を確認します。

読み:しょう

女性が自分をへりくだって示す場合があります。すべての女性が常に使う語ではありません。

余裕があれば確認したい一人称

  • 吾(われ):話者が自分を表す語。細かな用法は文脈で確認する。
  • 余・予(われ):作者や話者が自分を表す場合がある。
  • 僕(ぼく):自分をへりくだって示す場合がある。人に仕える者を表す名詞の場合もある。
  • 寡人(かじん):君主や諸侯が自分を示す場合があり、話者の立場を考える手がかりになる。

一人称を文章の中で確認する

次の二つは、人物関係を説明するための学習用例文です。

臣、之を聞く。

「臣」が使われているため、君主に対する臣下の発言である可能性を考えます。

朕、之を知る。

「朕」が使われているため、帝王側の発言として人物関係を確認します。

思想キーワードと多義語を優先する

儒家や法家などの思想に関わる文章では、「仁」「義」「礼」「利」「道」「徳」などの語が文章の主張に関わることがあります。単独の意味だけでなく、何と対比されているかも確認しましょう。

多義語は、現代日本語でよく使う意味だけで判断すると誤読することがあります。教材の重要語一覧を使い、本文で出会った語を少しずつ追加していく方法が現実的です。

漢文の「殆」はどう読む?

「殆」には、殆し(あやうし)と読む場合と、殆ど(ほとんど)と読む場合があります。どの読みや意味になるかは、語だけで決めず、前後の文脈から判断します。

原文:思而不学則殆。

書き下し文の一例:思ひて学ばざれば、則ち殆し。

現代語訳の一例:自分で考えるだけで、人から学ぼうとしなければ危うい。

出典:『論語』為政第二(本文の一部)

6. 古文文法を漢文読解に生かす

漢文の訓読では、漢文を日本語の語順や文法に合わせて読みます。その結果としてできる書き下し文には、古文の助詞、助動詞、活用、歴史的仮名遣いが使われます。

そのため、返り点どおりに漢字を並べ替えられても、古文文法が分からないと、書き下し文から現代語訳へ進めないことがあります。

確認する古文知識 漢文で役立つ場面
否定の助動詞「ず」 「不」「未」などを含む書き下し文を理解する。
推量・意志の助動詞「む」 「将に〜んとす」などの形を読む。
反語の表現 「〜んや」といった形の意味を判断する。
動詞・形容詞の活用 書き下し文中の活用した形を理解する。
助詞の働き 主語、対象、比較、疑問などの関係を整理する。

古文の一人称とは区別して考える

漢文の「朕」「臣」「孤」「妾」などは、中国の文章中で話者の立場を示す語です。一方、古文では「われ」「おのれ」など、日本語としての人称表現を扱います。

漢文の一人称と古文の一人称を同じ一覧として覚えるのではなく、一人称は原文中の人物関係を読むために使い、古文文法は書き下し文を理解するために使うと整理すると混同しにくくなります。

7. 試験別に優先する内容を決める

返り点、書き下し文、基本句法は、試験の種類にかかわらず漢文学習の土台になります。そのうえで、学校の定期試験、共通テスト、大学別試験では、優先する練習を調整します。

学校の定期試験

教科書本文の訓読、授業で扱った句法、書き下し文、現代語訳を優先します。

授業ノート、配布資料、学校指定の問題集を基準にします。

共通テスト

基本句法、人物関係、文章の主張、選択肢の根拠確認を優先します。

基礎を固めた後、時間を意識して文章全体を読みます。

国公立二次・私立大学

志望校で問われる句法、現代語訳、内容説明、白文や記述への対応を確認します。

大学によって形式が異なるため、過去問を基準にします。

共通テストと大学別試験で勉強法を完全に分けるのではなく、まず返り点と句法を共通の土台として固め、その後に過去問や学校の出題範囲へ合わせます。

大学受験の古典全体について、指導方針や学習範囲を確認したい方は、大学受験の古典(古文・漢文)個別指導もご覧ください。

学校の授業や定期試験を中心に進めたい方は、定期試験対策の全体像で確認できます。

動画で学ぶ:漢文はどう勉強する?

返り点、句法、音読、重要語、古文との関係を本文で確認した後に、対談動画で漢文学習の考え方を振り返ることができます。動画を見なくても、基礎的な学習順は本文だけで確認できる構成にしています。

古典専門塾かきつばた講師・岡部と、中学受験専門 夏井算数塾代表・夏井による対談形式の動画です。

よくある質問

漢文がまったく読めない場合、最初に何をすればよいですか?

最初にレ点と一二点を確認し、短い文へ読む順番を書き込みます。正しい順番で読めるようになったら、書き下し文と現代語訳を対応させ、その後に再読文字や否定などの句法へ進みます。

返り点を読めても意味が分からない場合は、何を確認しますか?

書き下し文に含まれる句法、重要語、古文の助詞・助動詞を確認します。また、主語や目的語が省略されていることもあるため、前後の人物や話の流れも見直してください。

朕・孤・寡人の違いは何ですか?

は帝王の一人称として現れる語です。は君主や諸侯が自分を示す場合があり、寡人も君主や諸侯が自分を示す語として使われます。いずれも現代語訳では「私」となることがありますが、時代、話者の身分、相手との関係を合わせて確認します。

妾はすべての女性が使う一人称ですか?

すべての女性が常に使う語ではありません。女性が自分をへりくだって示す場合がありますが、身分、相手との関係、時代によって用法が異なります。語だけで決めず、前後の文脈も確認してください。

漢文の「殆」はどのように読みますか?

文脈によって、「殆し(あやうし)」と読んで危険な状態を表す場合と、「殆ど(ほとんど)」と読んで「ほぼ」という意味を表す場合があります。前後の内容から、どちらの読みと意味が自然かを判断します。

共通テストと私立大学で漢文の勉強法は変わりますか?

返り点、句法、重要語などの基礎は共通です。その後、共通テストでは文章全体と選択肢の根拠を確認する練習を行い、大学別試験では過去問を使って現代語訳、記述、白文など必要な形式へ対応します。

古文が苦手でも漢文から勉強できますか?

返り点や基本句法から始めることはできます。ただし、書き下し文は古文の文法で書かれるため、否定の「ず」、推量・意志の「む」、動詞や形容詞の活用なども並行して確認すると理解しやすくなります。

まとめ:返り点から始め、短文の中で知識を使う

漢文は学習する項目を比較的整理しやすい分野ですが、用語や句法を暗記するだけでは文章を読めるようになりません。短い文を使い、読む順番、書き下し文、現代語訳を一つずつ対応させましょう。

  • 最初にレ点と一二点を確認し、読む順番を示せるようにする
  • 書き下し文と現代語訳の違いを理解する
  • 再読文字を、通常の返り点と区別して覚える
  • 否定、疑問・反語を原文の中で見つける
  • 音読では語順、区切り、対比、発言者を確認する
  • 一人称は意味だけでなく、話者の身分や人物関係まで見る
  • 「殆」のような多義語は、前後の文脈から読みと意味を判断する
  • 基礎を固めた後、定期試験や志望校の出題形式へ合わせる

返り点付きの短文を正しい順番で読み、句法や人物関係を説明できるようになったら、少しずつ長い文章と問題演習へ進みましょう。

漢文・古文をまとめて得点源にしたい方へ

返り点、句法、音読、重要語など、取り組む内容が分かっても、現在の理解度や試験までの期間によって、優先する内容は変わります。

古典専門塾かきつばたでは、完全1対1の個別指導で、古文・漢文の基礎確認から入試問題の演習までをサポートします。返り点や句法の確認、書き下し文、現代語訳、志望校の過去問演習など、一人ひとりの状況に合わせて学習内容を組み立てます。

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