東下り「京にはあらじ」本文・現代語訳・品詞分解(伊勢物語)
東下り「京にはあらじ」
伊勢物語「東下り」|現代語訳と重要表現の品詞分解
『伊勢物語』「東下り」冒頭の本文、現代語訳、重要語句、助動詞、読解のポイントをまとめています。
特に問われやすい「京にはあらじ」について、品詞分解だけでなく、男が都を離れようとする心情まで確認します。
このページの品詞分解は、本文中の全語ではなく、「あらじ」「すむべき国」「いたりぬ」などの重要表現を中心に扱っています。
「京にはあらじ」の意味と品詞分解
「京にはあらじ」は、基本的に「京には住むまい」と訳します。
| 語句 | 品詞分解 | 意味 | 本文での読み方 |
|---|---|---|---|
| 京にはあらじ | あり(ラ変動詞)未然形「あら」+助動詞「じ」 | 京には住むまい | 都を離れようとする男の決意 |
- 「あら」はラ変動詞「あり」の未然形です。
- 「じ」は未然形に接続し、打消意志や打消推量を表します。
- この場面では、男自身の意志を表す打消意志として読むのが基本です。
『伊勢物語』「東下り」本文
【本文】
むかし、男ありけり。その男、身をえうなきものに思ひなして、京にはあらじ、あづまの方にすむべき国もとめにとてゆきけり。もとより友とする人、ひとりふたりしていきけり。道しれる人もなくて、まどひいきけり。三河の国八橋といふ所にいたりぬ。そこを八橋といひけるは、水ゆく河のくもでなれば、橋を八つわたせるによりてなむ、八橋といひける。その沢のほとりの木のかげにおりゐて、かれいひ食ひけり。その沢にかきつばたいとおもしろく咲きたり。
(注)三河の国=現在の愛知県。
『伊勢物語』「東下り」現代語訳
【現代語訳】
昔、男がいた。その男は、自分の身を無用なものと思い込んで、「京にはいるまい」と、東国の方に住むのにふさわしい国を探そうとして出かけて行った。もともと友人であった人が、一人二人といっしょに行った。道を知っている人もいなくて、道も分からないまま進んで行った。三河の国の八橋という所に着いた。そこを八橋といったのは、水の流れる川が蜘蛛の足のように分かれているので、橋を八つ渡してあることによって、八橋といったのである。その沢のほとりの木陰に下りて座って、乾飯を食べた。その沢には、かきつばたがたいそう趣深く咲いていた。
「男がいた」は「男ありけり」、「京にはいるまい」は「京にはあらじ」、「住むのにふさわしい国」は「あづまの方にすむべき国」、「着いた」は「いたりぬ」に対応します。
重要語句と文法のポイント
「東下り」の冒頭では、男の心情を示す語句と、助動詞の意味を文脈に合わせて判断することが重要です。
重要語句の意味
| 語句 | 意味 | 本文でのポイント |
|---|---|---|
| 身をえうなきものに思ひなして | 自分を役に立たない者と思い込んで | 男の自己否定的な心情を表す |
| 京にはあらじ | 京には住むまい | 都を離れようとする決意を表す |
| すむべき国 | 住むのにふさわしい国 | 「べし」を適当・相応の意味で取る |
| くもで | 蜘蛛の足のように枝分かれした形 | 八橋の川筋の形を表す |
| かれいひ | 乾飯、干した飯 | 旅先で食べる保存食 |
| おもしろく | 趣深く、心を引かれるように | かきつばたの情景を印象づける |
助動詞の確認
- けり
過去・詠嘆を表す助動詞です。冒頭の「男ありけり」では、昔の出来事を語り始める表現として、過去の意味で「男がいた」と訳します。 - じ
未然形に接続し、打消意志・打消推量を表します。「京にはあらじ」は、男自身の意志として「京には住むまい」と訳します。 - べし
文脈によって意味が変わる助動詞です。「すむべき国」は、「住むのにふさわしい国」と取るのが自然です。 - ぬ
「いたりぬ」の「ぬ」は完了を表し、「到着した」と訳します。 - たり
完了・存続を表す助動詞です。「咲きたり」では、かきつばたが咲いている状態を表す存続として読みます。
重要表現の品詞分解
ここでは、定期試験で確認されやすい表現を中心に品詞分解します。
| 表現 | 品詞分解 | 確認すること |
|---|---|---|
| ありけり | あり+けり | ラ変動詞「あり」連用形+過去・詠嘆の助動詞「けり」終止形。ここでは過去 |
| 思ひなして | 思ひなす+て | 動詞「思ひなす」連用形+接続助詞「て」 |
| あらじ | あり+じ | ラ変動詞「あり」未然形「あら」+打消意志の助動詞「じ」終止形 |
| すむべき国 | すむ+べし+国 | 動詞「すむ」終止形+助動詞「べし」連体形「べき」+名詞「国」 |
| いたりぬ | いたる+ぬ | 動詞「いたる」連用形+完了の助動詞「ぬ」終止形 |
| 咲きたり | 咲く+たり | 動詞「咲く」連用形+完了・存続の助動詞「たり」終止形。ここでは存続 |
品詞分解では、語を分けるだけでなく、その助動詞が現代語訳や人物の心情にどう反映されるかまで確認することが大切です。
「東下り」冒頭の読解ポイント
1. 男が京を離れるまでの心情を読む
男は、自分を「えうなきもの」と思い込み、そのうえで「京にはあらじ」と決意します。
- 「えうなきもの」は、男が自分を無用な存在だと考えていることを示します。
- 「思ひなして」には、自分でそのように思い込むという意味があります。
- 「京にはあらじ」は、その心情を受けて都を離れようとする決意を表します。
本文には、男がなぜ自分を無用な者と思ったのかという詳しい事情までは書かれていません。書かれていない理由を一つに決めつけず、本文中の言葉を根拠に読むことが大切です。
2. 「京」と「あづま」の対比を押さえる
- 「京」は、男が離れようとしている現在の場所です。
- 「あづま」は、新しい居場所を求める先として示されています。
- 都を離れる心情と、東国で新しい場所を探す行動がつながっています。
3. 道中の不安を読む
「道しれる人もなくて、まどひいきけり」は、道を知る人がいないまま、迷いながら進んでいく様子を表します。
まずは、都を離れた男たちが、案内する人のいない不安な旅を続けている場面として押さえます。
4. 八橋とかきつばたの役割を押さえる
- 八橋は、川が蜘蛛の足のように分かれ、八つの橋が架けられた場所として説明されています。
- 具体的な地形の説明によって、旅の場面が視覚的に示されます。
- 「かきつばたいとおもしろく咲きたり」は、このあとに続く、かきつばたを題材とした和歌の導入です。
授業・定期試験で確認したいポイント
| 本文理解 | 男が自分を無用な者と思い、京を離れて東国へ向かう流れ |
|---|---|
| 重要語句 | えうなき、思ひなす、くもで、かれいひ、おもしろし |
| 重要文法 | 助動詞「けり」「じ」「べし」「ぬ」「たり」の接続と意味 |
| 記述対策 | 「京にはあらじ」に表れた男の心情と、八橋の情景が持つ役割 |
| 続きとの関係 | かきつばたの描写が、このあとに続く和歌のきっかけになること |
現代語訳を覚えるだけでなく、どの古語や助動詞がその訳に対応するかを本文上で確認しておくと、語句問題や記述問題に対応しやすくなります。
古文の定期テスト全体の進め方を確認する
『伊勢物語』だけでなく、授業ノート、現代語訳、古語、文法、記述問題をどの順番で復習するか迷う場合は、古文のテスト勉強法もあわせて確認できます。
復習チェックリスト
内容理解
- □ 「身をえうなきものに思ひなして」が表す心情を説明できる。
- □ 「京にはあらじ」を「京には住むまい」と訳せる。
- □ 男が京を離れて東国へ向かう流れを説明できる。
- □ 八橋の地形を自分の言葉で説明できる。
- □ かきつばたの描写が後の和歌につながることを説明できる。
語句・文法
- □ 「えうなき」「くもで」「かれいひ」「おもしろく」の意味を答えられる。
- □ 「ありけり」の「けり」を過去として説明できる。
- □ 「あら」がラ変動詞「あり」の未然形だと分かる。
- □ 「じ」を打消意志として説明できる。
- □ 「べき」を文脈から「ふさわしい」と訳せる。
- □ 「いたりぬ」「咲きたり」の助動詞を説明できる。
復習方法
- □ 現代語訳を隠して自力で訳した。
- □ 本文中の語と現代語訳を対応させた。
- □ 音読しながら意味の切れ目を確認した。
- □ 語句だけでなく、男の心情の流れをまとめた。
助動詞を印刷して書き込みながら復習する
「けり」「じ」「べし」「ぬ」「たり」以外の助動詞も含めて、活用や接続を一覧で確認したい場合は、活用表PDFを使って復習できます。
『伊勢物語』「東下り」に関するよくある質問
「京にはあらじ」はどう訳しますか
「ありけり」の「けり」はどの意味ですか
「えうなきもの」とは何ですか
「すむべき国」の「べき」はどう訳しますか
八橋はなぜ重要ですか
このページには全文の品詞分解がありますか
学校教材に合わせて確認したい場合
自習だけでは本文と現代語訳の対応や、助動詞を選んだ理由を整理しにくい場合は、確認したい範囲に合わせて講座を選べます。
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