■大学入試共通テスト対策、を大真面目に考えよう!【大学入試共通テスト(国語)考察③】
夏井(中学受験専門夏井算数塾代表):大学入試共通テストというテーマでお話をしているので、
このテストの点数を取る為に必要な対策とは、というお話をお伺いしたいです。
ですが、恐らく今の感じで言うとちゃんと定番のアプローチを身に付けて問題をさっさと解く、
ちゃんと精読出来るようになりましょうという事で終わりそうな気がします。
なので、このテストに特化して出来る事が果たしてあるのか、という事を伺いたいなと思います。
岡部:特徴としてはやっぱり選択肢の足が長いです。
選択肢の一文が多分私大の倍から3倍ぐらいある訳です。
ここの処理というのに割と手間取る方が多いんじゃないかなと思います。
ただ、逆に選択肢が長いという事は、ポイントがたくさんあるという事でもあるので、選択肢を切るのが早くなるというのはあるかも知れません。
明確にダメという箇所がたくさん出てくるので、二択までは多分スピードが凄く早くなります。
そこは意識してくれた方がいいのかなと思います。
ただ問題は、二択まで絞った所で、そこから先は選択肢が長いから逆にもの凄い手間が掛かります。
一個一個のパートについてチェックしなきゃいけなくなるので面倒臭くなる気はします。
長島(読解ラボ東京代表):それは現代文と古文でギャップがある気がしています。
言えば消去法的な話ですよね?
岡部:そうですね。
長島:もちろん消去法で解く問題もあります。
大問1の問6番は基本的に消去法だと思います。
ですが、この内容が欲しいと思って、それがある選択肢は?となっていったら一択でしょ、となる
問題の割合が私大よりも高い気がしています。
やっぱり共通テストは凄い練られているテストだと思います。
だから答えの根拠とかはっきりしているし、説明しにくいなと思う問題はセンターの時代を含めて
私大と比べたら圧倒的に数は少ない訳です。
岡部:それは圧倒的にそうですね。
長島:そう考えたらむしろパッと答えを掴む力、この内容が欲しいと認識する力の方がむしろ共通テストの方がその力を求められるんじゃないかという気がしますが、そこらへんいかがですか?
岡部:それは多分傾向としてはあるかも知れないです。
これは中々全ての受験生にお願い出来る事ではないですが、今の話から変易させていくと、回答を記述作れる、完全に作れる、東大の回答のようにちゃんと作らなきゃいけない事はないですが、ざっくり自分の言葉でこういう答えだよね、というのを出来るようにはして欲しいんです。
中々私大専願で国語をあまり得意としていない生徒さんに中々難しい要求ではありますが、選択肢で答えを作るのではなくて、自分でまずざっくりとした、ドラフト的なレベルで構わないので、この質問についてはこういう答えだろうというのは書けるようにはしておいた方がいいのかなという気はします。それは古文も一緒です。
長島:でも、結局の所本質的な力は変わらないと思います。
別に今の話だって、私大も結局答えにあたる内容を見つける。
もちろん共通テストの方が練られている変な選択肢がないというのもあって解き易いけど、結局この内容が答えだよね、と認識する力が必要です。
それは本質的には私大も共通テストもついでに言えば国公立も変わらないと思うんです。
岡部:そうですね。おっしゃる通りだと思います。
その上で古文で対策出来るという事に関しては、共通テストの点数をきちんと取りたい、
40点オーバー、42点、出来れば45点、満点取りたいという事であるならば、同傾向の問題というのが実は他にないです。
明確にこの系統の問題というのはないので、やはりセンター試験の過去問を解いていくというのが
一番の近道だろうと思います。
きちんとセンター試験に関して、共通テストもそうでしょうが、解答解説が各社充実していますので、ちょっと共通テストになってからあんまり言われなくなりましたが、追試なんかも含めて10回分ぐらいは解きなさいとよく言われます。
経験というか数をこなして身に付けていく所というのはやっぱりどうしてもあります。
なので、3回分、追試も含めて6回分といっても、最初の2回の追試は事古文に関してはセンター試験の時代と同じタイプの問題でした。
長島:現代文もそうでした。
岡部:そういう意味ではセンター試験も含めて過去問を解いていくという事が大事にかと思います。
別にそんなに古い平成5年とか僕が受験生だった頃の問題まで遡る必要はないですから、せいぜい平成20年代ぐらいの後半ぐらいまででいいかなと思います。
たくさん解いて、問題演習をして頂ければと思います。
長島:でも現代文は逆かも知れないです。
1990年代とかの方が、生徒さんのレベル感にもよりますが、90年代の方が文章短いです。
岡部:やり易いはやり易いですね。
長島:やり易いです。苦手な人は本当に古い問題からやるというのも一つの手だと思います。
岡部:なるほど、そうですね。
だから、似た傾向の問題を求めようというのであれば直近の問題から、学習過程として初期の頃は
古いものを探してというのもいいと思います。
こればかりはデータベースが手元にあるかどうかというのもあるでしょうから、学校に古い赤本が
充実しているとか、学校の先生がデータベース持ってらっしゃるとかいうような環境にある人はそれも手です。
特に初学の段階では古い問題であるとか、90何年、95年とか、89年からデータベース自体はずっとあります。あるいは、国語1、2という時代があります。
本当に初学の段階、あるいは高校2年生とか1年生の段階では国語1の問題を解いてみるというのも手かも知れないです。
昔からのセンター試験というのは非常に良く出来ている問題で、解答が作れない問題はあんまりない訳です。ほぼないです。
いちいちそれぞれに根拠があるので、中々国語1の赤本は手に入らないと思いますが、もし解説も含めてちゃんとあるようであればそういったものを使ってみるのも宜しいんじゃないかなと思います。
夏井:ありがとうございます。
90年代が簡単という話でしたが、私90年代のテストで200点満点中112点を取ったので非常に忸怩たる思いがあります。
長島:99年です。大問2が眠れる分度器の時ですよね?
眠れる分度器は難しかったです。あれは難しかった…
夏井:あの大問2で全部落としたというのが私です(笑)
長島:確か大問1は結構やりやすかった気がします。
岡部:僕あれ好きな文章、好きな問題だったんですけど(笑)
長島:眠れる分度器、99年の大問2は問1番の言葉の意味を聞く問題から難しいんです。
言葉の意味を聞く問題の体をして、実質読解問題になっていますから、比喩の読解になっています。
あれは難しかったです。
夏井:その関連ではありますが、本当に現代難しいなという事を私は試験の現場で思った訳です。
これは別にその所為もあってって話で別に直接的な要因ではないんですが、昔センター試験って古文漢文は結構余裕だ、みたいな話がありました。
岡部:はい、簡単でした。
夏井:満点取れるはずだよねというプレッシャーからちょっと引っ掛かるみたいな事が起きがちなんですが、その引っ掛け方って何かあるのかな?とずっと思っていますがいかがでしょうか?
岡部:そうですね、難しいですね。
難しいというのは、私は読めれば皆解けるという人なので、現代語訳を見ながら答えたら答えられるだろうというアプローチなので、ちょっと中々難しい所ではあります。
長島:ちょっと待って下さい。
じゃあ裏を返せば、この所為で読めないよね、というポイントが引っ掛かる所なんじゃないですか?
岡部:う~ん…確かに選択肢が絞りにくい問題というのは実際あります。
ですが、解答根拠が散らばっている時がある訳です。
長島:それは現代文でもあります。
岡部:要するに引っ掛けの選択肢の根拠がここにあって、随分離れた所にあって、そこは何となく読んでいる中で記憶が薄らいでいく中で、この辺に書いてあった気がするという記憶で解いちゃう場合があります。
長島:それって現代文だったら一回読んでおしまいってない訳です。
また傍線がある段落をチェックして、やっぱりこういう内容が答えね、と思ってまた戻る訳です。
もちろん戻るまでもなくこれが答えに決まっていると解ける問題も半分ぐらいあります。
ありますが、基本的にちょっとでも引っ掛かったら本文に戻って前後をチェックする訳ですが、古文って戻りますか?
岡部:戻るんだと思います。
戻りますが、多分その辺の因果関係であるとか、あるいは正しく読めていないというのがあります。
長島:戻ったとしても、結局読めないから選べないという事ですか?
岡部:というのはあるんじゃないですかね?
長島:その読めないポイントが明らかになればどうですか?
岡部:ただあとは古文の場合は時間がどうしてもなくて、ちゃんと戻ってないというのもあります。
戻った時にも、さらっとさっき読んだ記憶でこの辺この辺というので解くので、この辺と指摘したままで終わっちゃうんです。
この辺がどういう事かちゃんと書かれていたか、というのを精読しないです。
だから、さらっと読む、詳しく読む、の話に話が戻りますが、当然さっきさらっと読んだ箇所でも問題の解答根拠になっている箇所は絶対に精読しなきゃいけない箇所な訳です。
ですが、多分そこまで時間が足りないという方が多いんじゃないでしょうか。
長島:という事は、選択肢の中で要は解答根拠で何となくここだな、というのがある。
どの選択肢もそこの事を言っているんだけど、それの解釈が微妙にズレていて、ズレているやつを削った結果こいつが残るって感じですか?
岡部:そういう場合もありますし、あるいはフェイクの選択肢が違う箇所を根拠にしているという事がある訳です。
違う箇所を間違った解釈をしちゃうと、その選択肢になってしまいます。
ただ、そうとも何となく読めちゃいそうな、引っ掛かっちゃいそうな問題になっている、選択肢になっているという事がある訳です。
その時に、もう一度振り返ってちゃんと精読出来ていれば選択肢がちゃんと切れる訳ですが、そこまでちゃんと時間を取ってないです。
1回通読するのに時間が掛かり過ぎてしまうという事が多いんじゃないかなと思います。
このあたりは現代文は多分先生によって小問の方を先に見なさいという先生と、小問はあとに回しなさいという先生と流儀があると思うんですが、事古文に関しては先に小問の選択肢をざっとでも見ておくという事がとても大事です。
何度も何度も読み返す時間は実際受験生にはないので、前もって傍線の根拠になりそうな所というのはきちんと精読をしているという事を最初の通読の段階でしておくというのはとっても大事です。
時間を短縮させるという意味においてもです。
長島:元々は引っかかりポイントですよね。
夏井:だったんですが、それはそれで大丈夫です。
岡部:引っ掛かりポイントはない気がします。
長島:でも、そうですよね。
古文は結局読めるかどうかですかね?
岡部:だと思います。
だって、現代語訳を読んだら皆解けます。
長島:だから現代語訳を作れないのが問題なんですよね?
夏井:現代語訳はこうだって思い込みやすいものがあるのかなと思います。
長島:それはあります。
夏井:こう勘違いしがちだね、というものがちゃんと問題の設問として引っ掛けられるように出来ているという事なのか、シンプルに受験生の勉強が足りないのかですね。
岡部:多分、その問題になっている箇所と全然関係なく随分手前の方で話がトンチンカンな方向に進んでいるからです。
模試を解き終わったあとに現代語訳を読むと、途中まではあっているんだけどある一点から離れ始めて、最終的に全然違う結論になっているという事があると思います。
そういう経験は多分何度もされていると思いますが、それって多分問題と関係ない所からズレ始めていて、もう引き返せなくなっている事があります。
こっち方向に話の惰性が働いているからこうとしか読めなくなっちゃっている訳です。
夏井:そうですね、気が付いたら知っている単語でも意味が変わっている時があります。
岡部:そうです。なので、正しく読むというのがいかに大事かという事ではあると思います。
ただ、とはいえ設問自体が解釈のヒントになってくれる事が非常に多い訳です。
傍線が引かれているからここって重要な所だろうというあたりが付くだろうし、選択肢からしてこういう話にいきそうだ、というヒントになるというのがある訳です。
それは別に共通テストに限らず選択式の問題を出す私大も含めてそこをうまくヒントに使うというのは戦略的に正しいと思います。
往々に騙される事もありますけど。うまく使ってもらえればと思います。
そこが東大と違う所です。
何も注釈も何もない所に傍線だけパパっと引いてあって、これを訳せ、これを説明せよ、みたいなそういう冷たい問題ではなく、いちいちある種のリード文代わりになってくれている所があるから、
そこはうまく工夫をする、使う必要はあると思います。
長島:私から一ついいですか?
センター試験の時代、漢文から解けって指導する先生が一定数いますよね?
漢文が解き易くて時間もそんなに掛からないから、古文が一番難しいので、逆にいえば古文で失点した所で元々そんなに出来ないからというのがありました。そうであれば、漢文、現代文、古文の順番で解けと指導していた先生って一定数いらっしゃるじゃないですか?
ついでに私はそれそれなりに合理的だなと思いながら聞いていましたが、共通テストになってそれはどうですか?変わりましたか?
岡部:それが有効なタイプのお子さんには今でもそれは有効なんじゃないかなと思います。
やっぱり時間が足りないというのはセンター試験の頃から変わらないですし、漢文が掛けた労力に対して出てくる結果が大きく出やすいというのはあります。
長島:それは共通テストになっても変わっていないですか?
岡部:それは変わってないです。
大学入試の古文というのは、それなりに勉強すれば国文科に行って古文の読み方みたいな事を勉強しなくても普通に授業に入っていけます。
ところが、大学入試漢文を勉強したからといって中国文学科で古典漢文を読む上で、それは入門レベルにすらなってないレベルなんです。
なので、逆に言うとそこがゴールな訳です。
長島:受験では、ですね。
岡部:受験では、です。
ですので、漢文は要求レベルが凄く低い訳です。
実を言うとも何も、皆さん実感しての通りだと思いますが漢文は取り易い科目には違いない訳です。
文章の構造としても二項対立が非常に奇麗に出ていたりとかして想像もつきやすいです。
お話のパターンもそれほど多くないですから、こういうふうに話は進んでいくだろうという予測が立てやすいです。
という事もあって時間が掛からない科目というのは確かにそうなんじゃないでしょうか。
ただ満点を取ろうと思うと中々それはまた話が別なんでしょうけれど、基本的にはやっぱり漢文を先にやるというのは戦略としてはありだろうと思います。
それに対して古文ですが、古文を最後に回していいんですかね?その辺はちょっと分からない所です。
長島:難しいですね。
岡部:難しいですね。私は最初から解いた方です。
長島:大問1からですか?
岡部:大問1から解いた方なので、あまり考えた事がないです。
長島:先生の場合間に合いますからね(笑)
岡部:そもそもそうですね。
時間は例えば40分で切って忙しいなと思って漢文で調整するという感じです。
漢文で熱心に読まずにさらっと読んで、それなりに答えがちゃんと作れるという意味では、僕は逆に漢文の方が細かく読まなくて済むので、最後に時間調整の為にもっていって残り2、3分を現代文の見直しとかに回すというのも手なんじゃないかなと思っています。
夏井:ありがとうございました。
じゃあ私はこれから過去の自分に今お話頂いた事を伝える為にタイムマシンを発明しようと思います。
長島:出来たら乗せて下さい(笑)